出版社内容情報
第70回江戸川乱歩賞受賞作!アニバーサリーイヤー!ミステリ界の新たな歴史を作る期待の新人、満を持して登場!
内容説明
孤島と化した遊廓で、国境を越えた愛と死の謎を解け!幕末日本。幼いころから綺麗な石にしか興味のない町娘・伊佐のもとへ、父・繁蔵の訃報が伝えられた。さらに真面目一筋だった木挽き職人の父の遺骸には、横浜・港崎遊廓(通称:遊廓島)の遊女屋・岩亀楼と、そこの遊女と思しき「潮騒」という名の書かれた鑑札が添えられ、挙げ句、父には攘夷派の強盗に与した上に町娘を殺した容疑がかけられていた。伊佐は父の無実と死の真相を確かめるべく、かつての父の弟子・幸正の斡旋で、外国人の妾となって遊廓島に乗り込む。そこで出会ったのは、「遊女殺し」の異名を持つ英国海軍の将校・メイソン。初めはメイソンを恐れていた伊佐だったが、彼の宝石のように美しい目と実直な人柄に惹かれていく。伊佐はメイソンの力を借りながら、次第に事件の真相に近づいていくが…。4時間半の選考会でもっとも激論となった、ミステリー史上最大級のスケールの衝撃作!第70回江戸川乱歩賞。
著者等紹介
霜月流[シモツキリュウ]
1993年東京都生まれ。学習院大学法学部法学科卒業。会社員をしながら執筆活動を行う。東座莉一名義も。本作が長編デビュー作となる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
夢追人009
235
選考委員が悩んだ末に選ばれた江戸川乱歩賞受賞作というのがうなずける評価の難しい作品ですが、ドラマティックな設定で唸らせて最後まで読ませる力作だとは思いますね。父の冤罪を晴らそうとする娘・伊佐と心中を図って男に裏切られ死んだ姉を持ち「信実の愛」を求める女・お鏡の二人がそれぞれに幕末の遊郭島に外国人相手の娼婦ラシャメンとなって乗り込む物語です。伊佐の名探偵ぶりに感嘆しましたが、お鏡は唯哀しいです。二つの犯罪は共に罪なき人を陥れ無慈悲に殺す卑劣さが私には許し難く後味の悪さが残りましたね。#NetGalleyJP2025/01/14
starbro
215
改稿のため、出版が遅れたもう1作の今年(第70回)の江戸川乱歩賞受賞作、雰囲気は好きですが、乱歩賞作品としては微妙でした。二作受賞ではなく、どちらかと言えば、「フェイク・マッスル」を推しますが、「該当なし」でも良かった気がします。 https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=00003978282024/11/09
パトラッシュ
181
江戸川乱歩賞初の時代ミステリ受賞作。幕末の横浜に開かれた外国人向け遊廓という特異な舞台で、父の死の謎を探るため洋妾となった江戸の娘の伊佐と英軍将校のバディという設定が面白い。簡単に意思疎通できるのが都合よすぎるが、本格物として一応の水準に達してはいる。ただ最後で明らかになる事件の真相が証拠のない推測ばかりで、伊佐が犯人と名指しした相手が白を切れば成立しないのは謎解きとして弱い。また作者が女性のためか、遊廓で働く女の悲惨さや洋妾への差別などの描写がほとんどない。時代小説としての物足りなさが点数を下げている。2024/12/01
ちょろこ
137
遊郭、愛、ミステリの一冊。この3つが溶け合った第70回江戸川乱歩賞受賞作。時は幕末、舞台は横浜の遊郭島。あらぬ疑いをかけられ死亡した父の汚名をそそぐため、娘が遊女となって真相に迫るストーリー。"信実の愛"の証明に心ひっぱられ、突然ミステリへと導かれる変化が面白い。真相が明らかになっていく過程はまるで予想内の小波、予想外の大波のよう。特に想いの強さがぴたりと重なり合う大波がすごい。この時代だからこそかな、一途な愛、かすがいが際立つ気がした。そして読後じわじわと余韻のさざなみが押し寄せるそんな感覚も良かった。2024/12/22
nonpono
102
最近の江戸川乱歩賞が読みたくて。桐野夏生、藤原伊織、渡辺容子を知れたのは、この賞から。東野圭吾も「放課後」で受賞しているんですね。まず、帯や本にある、名のある作家の講評が面白い。そして本作の受賞に関して、かなりの議論が展開されたらしい。審査員の辻村深月は、その議論の時間が面白かったという。本書の時代は幕末で、舞台は横浜の港崎遊郭、遊郭島という密室。日本人も異人も通う盛り場。「らしゃめん」と呼ばれる異人の現地妻。そこで起こる殺人事件。この設定がまず凄い。物語が本気を出してくる最後の展開も。新たな門出に乾杯。2024/11/21
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