出版社内容情報
面倒くさい、複雑、抑圧的……
時に文豪を苦しめ、戦争を阻止し、巨額の損失を生み、
ついには死の世界を垣間見せる。
「事務」
それは人間を人間たらしめる究極の知恵。
事務の営みから人間のあり方を再考する、画期的エッセイ!
クソどうでもいいのに倒錯的な愛をかきたてる
かくも人間くさい事務の世界への探究。
内容説明
面倒くさい、複雑、抑圧的…時に文豪を苦しめ、戦争を阻止し、巨額の損失を生み、ついには死の世界を垣間見せる事務の営みから人間のあり方を再考する画期的エッセイ!
目次
第1章 漱石と大日本事務帝国
第2章 事務の七つの顔
第3章 事務処理時代の「注意の規範」
第4章 『ガリヴァー旅行記』の情報処理能力
第5章 「失敗」から考える事務処理
第6章 身体儀式と事務の魔宮
第7章 事務を呪うデイケンズ
第8章 鉄道的なる事務
第9章 エクセル思考で小説を書く
第10章 事務の「感情」を考える
第11章 事務に敗れた三島由紀夫
第12章 事務と愛とバートルビー
著者等紹介
阿部公彦[アベマサヒコ]
1966年生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科・文学部教授。英米文学研究と文学一般の評論を行う。1998年「荒れ野に行く」で早稲田文学新人賞、2013年『文学を“凝視する”』でサントリー学芸賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 2件/全2件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
trazom
109
「現代社会で不当に軽視され、嫌がられ、時には蔑まれさえしてきた事務の営みについて、再考したい」として書かれたユニークな一冊。夏目漱石、川端康成、三島由紀夫、小川洋子からスウィフト、ディケンズ、メルヴィルなど、洋の東西の文豪を「事務」という切り口で分析するのは、文芸評論に定評のある阿部先生の面目躍如。でも、「事務の感情」や「事務と愛」など、余りにも大胆な事務の概念の拡大に、正直、付いてゆけない。各作家の文学評論として読むには示唆に富むのだが、それを「事務に踊る人々」と纏めたことは、成功だったのだろうか…。2023/11/09
あやの
38
「事務的」と言うと、冷たいとか非人間的とかのイメージがあるが、本書はさまざまな文学の方向性から考察を重ねて「事務は感情の受け皿」だと締めくくる。事務という大きな枠組みを捉えるにはこのように多方面からの視点が必要になるのだろうが、私の考えていた「事務」と違いすぎてテーマを読みきれなかった……三島由紀夫のところとか、ちょいちょい面白いところはあったんだけどなー。取り上げられている作品をもっと読んでいたら違ったか。でも、読みながら「文学研究」は私は苦手だったことを改めて思い出した。2024/06/08
Mc6ρ助
18
残念ながら手も足も出ないシロモノに手を出してしまったのかも知れない。「事務」をめぐる安倍公彦さんのエッセイ、あまりに広範すぎてついて行けないが、事務の語源がbureaucracyならば「指示しました」という人たちを上司に持つ不幸を想像するに忍びない(指示することが仕事となりえるのは永田町だけと信じたい、「善処します」が懐かしい時代が来るとは誰が思うか)。日本の大学で文系が多いとお嘆きの貴方、就職にかかると事務系、技術系となるこの不思議さを噛みしめwithコロナwithシンゾウな令和を生きなければならない。2024/08/03
チェアー
11
何が書いてあるのか、私には理解しにくい話が多かった。事務の定義が揺れ動くので、何の事務についてどう共通点があって、この話をしているのかというのがよくわからなかった。西村賢太の話も出てくるが、これと事務がどう関係しているのか、やはりよくわからない。ガリバーの話も漱石の話も。話が一つのところにとどまっていないので、どの話をどういう密度でしているのかが読み取りにくかった。2023/11/14
おっとー
10
面倒臭くて分かりづらい、しかしこれなしには生きていけない…人間と事務を巡る四方山話。夏目漱石もディケンズも三島由紀夫も事務とは無縁ではいられず、そして最後には事務の奇人の頂点に立つバートルビーが題材となる。脱線多めでこれも事務?と思うような内容もあるものの、筆者が所々に挟む思考は人間が事務に抱く煩わしさと愛しさをうまく捉えている。人間の考えは「事務を効率化しよう」、「事務は手順通りにきっちりやろう」に二極化しがちだが、結局はその中間で、ほどよい距離感をもって事務と付き合うしかない。2024/05/06