内容説明
両親の死の真相を探るため、警察官となった19歳の沖野修也。警察学校在校中、二件の未解決事件を解決に導いたが、推理遊び扱いされ組織からは嫌悪の目を向けられていた。その目は、暗がりの中で身構える猫のように赤く光って見える―。それが、沖野の持つ「特質」だった。ある日、「内閣府国際平和協力本部事務局分室 国際交流課二係」という聞きなれない部署への出向を命じられた。そこは人知れず、諜報、防諜を行う、スパイ組織であった―。最注目作家がおくるスパイ小説の技術的特異点。
著者等紹介
長浦京[ナガウラキョウ]
1967年埼玉県生まれ。法政大学経営学部卒業後、出版社勤務を経て、放送作家に。その後、闘病生活を送り、退院後に初めて書き上げた『赤刃』で2011年に第6回小説現代長編新人賞、2017年『リボルバー・リリー』で第19回大藪春彦賞を受賞する。2019年『マーダーズ』で第73回日本推理作家協会賞候補、第2回細谷正充賞を受賞。2021年『アンダードッグス』では第164回直木賞候補、第74回日本推理作家協会賞長編および連作短編集部門候補となる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
168
犯罪者を判定する特殊能力の持ち主とは、同じ設定でシリアルキラーを追う漫画がある。警察の秘密組織にリクルートされて対象を見つけ次第処刑するが、やがて自分の能力には親絡みの秘密があるのがわかってくる展開だ。ストーリーの基本が似ているので何度も既視感を感じたが、スパイ小説として政治や外交関係のドラマも取り入れ、未熟な19歳の主人公がいきなり理不尽な経験をさせられて絶望と苦悩に苛まれる姿を描いていく。従来にない新しさで面白く読んだが、遭遇する四つの事件がどれもあっさり終わっており、もっと綿密な描写で読みたかった。2023/07/25
しんたろー
140
特殊能力をもつ沖野が主役のスパイもの…現実にありそうなハイテク技術や国家間の陰謀をまぶしながら、若い沖野が成長する物語になっている。先輩や上司は勿論、敵役や脇役まで曲者を配置していて、この手の連続ドラマ原作にピッタリな感じ。誰が味方なのか判らないのが面白いし、著者らしいアクション満載なのも嬉しい。沖野の両親の死や先輩&上司に謎が多すぎて、全てが解き明かされていないのが残念で、本作だけでは評価が難しい。とは言え、サクサク読めたし、始めから続編を想定して構想しているのだろうと思うので、続きを楽しみに待ちたい♬2023/08/28
モルク
116
主人公19才の沖野は不穏な気配、悪意を相手の目から読み取ることのできる特殊能力を持つ。そのため小学生の頃から対人が苦手で高校も中退するが、両親の事故死の真相を確かめるため警察学校へ。そして彼の特殊能力を以て諜報を司る国際交流二課へ配属となるが…。同じ課の人々も癖がありなかなか本質が掴めない。沖野の前任だった神津の存在、彼はなぜ姿を消したのか。彼は敵か味方か。アクション満載のエンタメ。リボルバーリリーほどのワクワク感はないが、沖野の成長が清々しい。が、真相は解明されず、これは続編ありということか。2023/10/11
stobe1904
92
【特殊能力を持つアクションスパイ小説】4作の短編から構成される連作集。事故死とされた両親の死因を探るため、警察官となった19歳の沖野修也は、人の悪意や敵意を探知する特殊能力を持つ。その修也の赴任先は内閣府の一組織で、防諜活動を行う部門だった…。未熟な修也がスパイとして成長するさまが描かれるが、著者特有の「突き抜け感」がこの作品でも健在。重厚感のある『プリンシパル』と異なり、連続するアクションとスピーディーな展開に振り切っているためあっという間に読み終えた。シリーズ化されるようなので次作が楽しみ。★★★★☆2024/03/14
ゆみねこ
92
人の悪意を相手の目が赤く光るという形で感じ取るという特殊能力を持つ沖野修也。両親の謎の死の真相を知るため警察官になるが、ある日突然聞き慣れない部署へ異動を命じられる。そこは人知れず防諜・諜報を行うスパイ組織。沖野を指導する先輩・水瀬や上司たちもクセが強く本当のことは何一つ明かさない。まるで映画の世界、派手なアクションや息詰まる心理戦。好みは分かれるかもしれないが面白くて一気読み。続編がありそうなラストなので楽しみ。2023/12/02