出版社内容情報
暴力、ネット、閉塞
阿部和重は時代を看取していた
「J文学」ブームを牽引した先進的傑作
まさに「初期」であるがゆえの
荒々しさとナイーヴさを併せ持った傑作揃い
――解説(佐々木敦)より
野間文芸新人賞受賞作、芥川賞候補作を収めた阿部和重の神髄がつまった新編!
現代日本文学の稀有な才能・阿部和重が不穏な語りで暗示する、危険で予知的な小説世界。
90年代末からゼロ年代初頭に発表された、野間文芸新人賞受賞作『無情の世界』(「トライアングルズ」「無情
の世界」「鏖(みなごろし)」所収)、芥川賞候補作『ニッポニアニッポン』を収めた阿部和重の神髄がつまった新編。〈解説=佐々木敦〉
内容説明
現代日本文学の稀有な才能・阿部和重が不穏な語りが暗示する、危険で予知的な小説世界。90年代末からゼロ年代初頭発表の、野間文芸新人賞受賞作『無情の世界』(「トライアングルズ」「無情の世界」「鏖」所収)、芥川賞候補作『ニッポニアニッポン』を収めた、阿部和重の神髄がつまった新編。
著者等紹介
阿部和重[アベカズシゲ]
1968年生まれ。’94年『アメリカの夜』で第37回群像新人賞を受賞し作家デビュー。’99年『無情の世界』で第21回野間文芸新人賞、2004年に『シンセミア』で第15回伊藤整文学賞・第58回毎日出版文化賞、’05年『グランド・フィナーレ』で第132回芥川賞、’10年『ピストルズ』で第46回谷崎潤一郎賞をそれぞれ受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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- 評価
本屋のカガヤの本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ソラ
8
4編収録された中編集。どの主人公も自意識過剰というか自分という存在を特別視し暴走に至ってる印象。ただ、そういう面は誰しもに内包してるところがあって、そういう自分の嫌なところを目の前に曝け出さされているみたいでいい意味で不快だった。2023/04/01
格
3
告白体で語られ、叙述トリックが仕掛けられているかのようにも読める『トライアングルズ』や、ある少年の切迫した(しかしインターネットへの書き込みという一点で途端に「嘘臭く」なる)体験談である『無情の世界』、また映画的なバイオレンス『鏖』と様々な文体、手法で語られる小説群が収録されているお得な一冊。とりわけ『ニッポニアニッポン』は素晴らしかった。他人からは絶対に理解されないであろう理由でトキに執着する春生は一言で言ってどうしようもない奴なのだが、読み進めていくうちにこのどうしようもなさが突き刺さりまくった→2025/01/07
ソラ
3
【再読】2023/07/23
寺基千里
2
久しぶりに読み返してみて、「ニッポンアニッポン」の無常感の凄いなと思った。トキを逃すか殺すかを綿密に調べ上げていくその情報量も凄いのだけど、その計算は完璧だったはずが実際にトキを捕まえようとするとどうにもならない事への諦めが一気にやってくる終盤が印象に残っている。情報はどうにでも扱えるけれど、人や動物など「モノ」は思うようにならないこのどうしようもなさが突き付けれた事が鴇谷春生に対して虚しさを感じさせて心を折ったのだと思った。 この印象でより「ニッポンアニッポン」が好きな作品になった。2024/06/04
P_CAPT
2
阿部作品はホントに映画的で面白い。暴走する家庭教師の物語を、教え子が被害者宛にしたためた手紙で語る。エロスな衝動の先に遺体を発見してしまうという物語は、ネット掲示板に掲載された相談。グロテスクな暴力が繰り返されるが、これから事件が起こるという不穏なシーンまで遡り、意外な人物目線でのラストシーン。この入れ子構造の仕掛けも阿部作品の醍醐味。2023/08/23
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