出版社内容情報
読んでいる間、ずっと幸福でした。――川上弘美
保坂委員が説明の途中で嗚咽した場面は
野間新人賞の選考の歴史に刻まれよう。――長嶋 有
選考委員--小川洋子、川上弘美、高橋源一郎、長嶋 有、保坂和志--
満場一致の、第43回野間文芸新人賞受賞作
【あらすじ】
児童養護施設に住む、小学五年生の集。
一緒に暮らす年下の親友ひじりと、近所を流れる淀川へ亀を見に行くのが楽しみだ。
繊細な言葉で子どもたちの目に映る景色をそのままに描く表題作と、
詩人である著者の小説第一作「膨張」を収録。
選考委員の絶賛を呼び、史上初の満場一致で選ばれた、第43回野間文芸新人賞受賞作。
内容説明
児童養護施設に住む、小学五年生の集。一緒に暮らす年下の親友ひじりと、近所を流れる淀川へ亀を見に行くのが楽しみだ。繊細な言葉で子どもたちの目に映る景色をそのままに描き出す表題作のほか、詩人である著者の小説第一作「膨張」を収録。史上初の選考委員満場一致で選ばれた、第43回野間文芸新人賞受賞作。
著者等紹介
井戸川射子[イドガワイコ]
1987年生まれ。関西学院大学社会学部卒業。2018年、第一詩集『する、されるユートピア』を私家版にて発行。’19年、同詩集にて第24回中原中也賞を受賞。’21年、本書で第43回野間文芸新人賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さてさて
158
『川』という存在を象徴的に用いる表題作と〈膨張〉という二編が収録されたこの作品。そこには、表題作では『児童養護施設』という閉鎖空間の中で日常を生きる小学5年生の集の人生が、〈膨張〉では塾講師という職はあるものの定住せずに『アドレスホッパー』としての日常を生きる女性・あいりの人生が、ある意味対になるように描かれていました。関西弁の描写に読みづらさを強く感じるこの作品。そんな物語の背景に、『児童養護施設』の存在を色濃く感じるこの作品。なかなかに難解と感じさせる物語の中に井戸川さんの独特な世界を見る作品でした。2024/06/26
クプクプ
86
井戸川射子さんの本は初めて読みました。「ここはとても速い川」は読者を子供時代に戻す不思議な作品でした。登場人物の子供たちがロッテリアのメニューで、どれが一番おいしくて得か語り合うシーンがありましたが、そういえば自分も子供の頃、ファーストフードで注文を選ぶときにワクワクしていたな、と思い出しました。また井戸川射子さんは子供が好奇心を持つ、際どい性的なことも逃げずに書ききる作家だと認識しました。関西弁の文章もリズムがよく、温かく成功していました。この先も大いに期待できる実力派の作家が誕生しました。2023/02/11
fwhd8325
83
なかなか図書館の予約が回ってこないうちに、文庫が発売されましたので購入しました。独特な文体は、井戸川さんが詩人だからなのかはわからないけれど、これはこれで引きつけてしまう力を感じました。表題作と小説デビュー作「膨張」の2編。合わせて150ページほどの作品ですが、作家の世界観を強く感じます。読む度に新鮮な気持ちになれそうな気がします。2023/01/13
nico🐬波待ち中
81
全体的にやわらかな文章。けれど中身は濃くたまに鋭く突き刺してくる印象の一冊。児童養護施設で暮らす小学生・集の物語(表題作)と、特定の住所を持たず生活拠点を点々としながら生活するアドレスホッパー・あいりの物語『膨張』。どちらも大人の都合で生活拠点を決められた子供たちが登場。普通の暮らしが何なのか。どんな生活ならいいのか。そんなことは其々の価値観だからどうでもいい。けれどそれに従うしかない子供たちの気持ちはどうなるのか。大人に振り回され、どこか諦めているような子供たちに感情が揺さぶられ、もやもやが止まらない。2023/02/04
佐島楓
73
自分はまだ幼稚な部分があるから子どもの気持ちがわかると思っていたけれど、そうじゃないと気づかされた一冊。ほんものの子どもははるかに無力だ。傷つけられたときにどう抗えばいいのかがわからないのだもの。それと同時に、わたしも無意識にひとのことを傷つけているなと思い知った。登場する少年たちがこれから進む路の険しさを思うと、何も言えなくなってしまう。ほんとうに。2022/12/22