出版社内容情報
庄子 大亮[ショウジ ダイスケ]
著・文・その他
内容説明
アトランティス、ムー、レムリア…。小説やアニメで誰もが一度は目にした幻の大陸。初めてこの伝説を語ったプラトンの思惑をはるかに超えて、“失われた大陸”は、二〇〇〇年以上も人類を魅了し続けてきた。日本に目を転じれば、偽史や皇国史観とも深くかかわった戦前から漫画や特撮もの、映画も含めた戦後のポップカルチャーに至るまでわれわれは“失われた大陸”に取り憑かれ続けている。なぜ、これほどまでに“失われた大陸”は魅力的なのか。数奇な受容史を丹念に跡づけ、その心性にせまる唯一無二のドラマ!
目次
序章 「失われた大陸」について問う理由
第1章 アトランティスの由来と継承
第2章 アトランティスからレムリア、ムー大陸へ
第3章 失われた大陸、日本―一九三〇年代
第4章 戦時のムー大陸言説―一九四〇年代
第5章 戦後の継承―一九五〇‐六〇年代
第6章 神話希求と大災害―一九七〇‐八〇年代
第7章 浮上し続ける神話―一九九〇年代以降
最終章 なぜ語られ続けるのか
著者等紹介
庄子大亮[ショウジダイスケ]
1975年、秋田県生まれ。京都大学大学院文学研究科指導認定退学。博士号(文学)取得。関西大学ほか非常勤講師を務める。専門は西洋古代史・西洋神話研究(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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読書という航海の本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
112
中学の頃チャーチワードに接してムー大陸を知り、同時期に『日本沈没』を読んで否応なく二重写しになった。アトランティスやレムリアともどもロマンをかきたてられたが、実在したとは考えていなかった。しかしプラトン以来「失われた大陸」伝説が人類を魅了し続けた歴史は、それ自体がジャンル史を成すほど積み重なっていたのだ。しかも日本では皇国史観に導入されて偽史や右翼の神話となり、戦後は多くの小説や漫画の舞台として日本人に完全に受容されていく。オカルトと結びついてオウム真理教を生んだのも、人が夢を求めずにおられない弱さ故か。2022/11/23
へくとぱすかる
63
オカルトブームの時代には、小・中学生の学習雑誌にも、「失われた大陸」や超能力、UFOの記事が盛んに掲載されている。単行本化された内山安二の作品にも、そういうテーマが複数回ある。サイエンスと並列されていたのは、いつかは科学的に解明されるとの期待感があったのだろう。のちに、と学会やASIOSによって、懐疑的に論じられていく、そんな歴史や風潮の概観を丸ごと見せてくれる本。「ない」とは思っていても、結論がわかっていても、超常現象などは端的におもしろい。ただ、楽しむのなら懐疑的な態度で臨むのが、ちょうどいいと思う。2022/09/28
HANA
61
非常に面白い。アトランティス、ムーといった海中に没した大陸。ロマン溢れるその説を日本が如何に受容していったかが中心に説かれている。まずは失われた大陸がどのように発生していったのかから始まり、説が輸入された明治。偽史と結びついた戦前、そしてサブカルとの関係を深めていった戦後とそれぞれの時代区分に合わせて丁寧に説明されている。読んでいてやはり一番面白いのは戦前の部分かな。ムー大陸を舞台に超国家主義者が舞い踊るのは一読の価値あり。翻って明治は例が少なすぎ、戦後は膨大な数になるため、あっさり目の記述になっている。2025/04/01
更紗蝦
42
アトランティスやムーに関する論説に突っ込みを入れる方向性ではなく、「事実と想像の相互作用」に焦点を当てて「失われた大陸はどのように語られ求められてきたのか」を論じている本です。読んでいて一番興味深かったのは、「失われた大陸ネタ」に政治的イデオロギーを結び付けて偽史が発展する気運が日本とドイツにあり、言説は似ているけれど“発想”に違いがあるという指摘でした。フィクション作品を列挙しているページがマニアックで面白かったので、「失われた大陸ネタ」のフィクション作品のガイドブックを是非とも出版して欲しいです。2023/02/18
kei-zu
26
西洋古代史が専攻の大学教授による「幻の大陸」論。アトランティスは、プラトンの思考実験。ムーは、自称冒険家の与太話。レムリアは、生態系分布を説明するための仮説。なんだけど、人は太古にロマンを見る(時には、自らの民族的優等性にまで牽強付会)。米ソが互いに情報を交換しなかった頃、日本では両国の仮説に触れやすかった。太平洋に面する日本はムーへの親近感が強い。日本産アニメ「ムーの白鯨」は欧州にも影響を与えている。などなど、「へー」が止まらない。2024/05/09