出版社内容情報
小倉 孝保[オグラ タカヤス]
著・文・その他
内容説明
酒と男、わいせつ裁判、自殺未遂、大やけど、生活保護…昭和の男社会を、自分の身ひとつで生き抜いた女性の本格評伝。
目次
プロローグ 中田カウスの恩人
第1章 溢れるしずく
第2章 一条さゆりの誕生
第3章 警察との攻防
第4章 時代が生んだ反権力の象徴
第5章 芸術か、わいせつか
第6章 塀の中、束の間の平穏
第7章 暗転
第8章 釜ケ崎に暮らす
第9章 ドヤ街の酔いどれ女神
第10章 過ぎゆく日々のなかで
第11章 見事な最期
エピローグ 拝まれる人
著者等紹介
小倉孝保[オグラタカヤス]
1964年滋賀県生まれ。88年毎日新聞社入社、カイロ、ニューヨーク両支局長、欧州総局(ロンドン)長、外信部長を経て、現在論説委員。2014年、乳がんの予防切除に道を開いた女性を追ったルポで日本人として初めて英外国特派員協会賞受賞。『柔の恩人「女子柔道の母」ラスティ・カノコギが夢見た世界』(小学館)で第18回小学館ノンフィクション大賞、第23回ミズノスポーツライター賞最優秀賞をダブル受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
鉄之助
270
これは”掘り出し物”です。「伝説のストリッパー」一条さゆり、とその時代が鮮やかによみがえってきた。彼女が発明したローソクショーがどんな芸だったにも、息をのむ。「直径2センチのローソクを3本束ね(多い時は15本も)」乳房に垂らしていく。上気して舞台から去る一条に「客は決まって、観音様を拝むようにして両の手を合わせていた」。ここから本のタイトルは決まった。「脱ぐならだれでもできる。脱ぐまでにお客さんに あくびをさせないことが大切!」と言い切る彼女の芸に対する執念。「特だし」をめぐる警察との攻防で時代を描き切る2024/09/02
kinkin
102
’60年から’79年代にかけてストリッパーとして多くの男性を魅了した一条さゆり。彼女のスストリップは猥褻ということで何度も警察に検挙され最後のは懲役1ケ月となり収監される。そういった彼女の活躍期から引退、そして彼女と一緒になる男たち、酒に溺れて亡くなるまでが書かれている。今でこそ動画サイトで女性の体は小学生でも見ることができるが当時はストリップ劇場くらしか行く場所がなかった。彼女はストリップを芸と言い切り様々な趣向をこらす。男性局は手をあわせ拝む後継も合ったという。女性の方にはその気持はわからないよ思う。2023/01/07
どんぐり
83
ストリップの女王、一条さゆりの評伝。映画『一条さゆり 濡れた欲情』が公開されたのが1972年。本名池田和子が生活保護を受けながら大阪市西成区の釜ヶ崎で暮らし、亡くなったのが1997年。もはや時代からは忘れられつつある。僕がストリップ小屋に最後に行ったのは、かれこれ数十年前。北九州のA級小倉劇場だった。その頃、一条さゆりはいなかったが、AV嬢の特出しがあった。そういう意味では、男どもが一条の開脚を注視し、菩薩を崇めるような気持ちになったのもわからぬではない。→2023/03/01
fwhd8325
74
同じ著者による「初代一条さゆり伝説」も読んでいますが、今回は読み応え十分です。描かれているように、自分よりもお客をを考えていたのだと思います。見せてはいけないものを見せている。ただ、そこはそれを求め、入場料を払っている場所です。いけないものはいけないではなく、求めるものがあればと言う考えも成立すると思います。知識人と言われる方々が、彼女を絶賛したことで、より注目を浴びてしまったのかもしれません。それでも当時、多くの男たちを魅了したことは紛れもない事実であり歴史なのです。2022/12/04
やいっち
71
「ウーマンリブが台頭してきた時代、わいせつ裁判を通して、図らずも「反権力の象徴」に祭りあげられた一条。普通の生活がしたいと願うも、周囲はそれを許さず、本人もまた酒と嘘と男に溺れていく。」というもので、かなりな程度、想像が付くような人生。2022/12/27