出版社内容情報
『わたしを空腹にしないほうがいい』『うたうおばけ』に続く、最新エッセイ集。
時が過ぎ、変わっていくもの、変わらないもの。
さりげない日常の場面や心情を切り取る言葉が、読む人の心に響く23のエッセイ。
「いまのわたしが、いまのわたしで、いまを書く。いまはこれから。」(本書より)
文芸誌「群像」好評連載「日日是目分量」に、書下ろし1篇を加えて書籍化。
内容説明
最新エッセイ集。
目次
日分量の日々
鶺鴒の日
じゃがりこ心拍数
歌の丘
虎のたましい人魚の涙
耳朶の紫式部
蝿を飼う
雪の道
白鳥は夜でも白い
竹馬とキートン山田〔ほか〕
著者等紹介
くどうれいん[クドウレイン]
工藤玲音。作家。1994年生まれ。岩手県盛岡市出身(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ちゃちゃ
109
強い自意識と自信の無さが同居して、めまぐるしく移り変わる。特に芥川賞の候補入りしてから、才ある若き文筆家は大きな重荷を背負った。そしてついに、会社員である自分を手放す決意をする…。本作は、作者が二十代半ばに書いたエッセイだが、より内省的で自己と真摯に向き合う姿が印象的だった。自分が何者であるのか、誰もがもがき苦しみながら、何かを手放し何かを選び取ってゆく。そこに迷いや不安はあっても、ぐらぐら揺れる等身大の自分を飾らず筆に託す。それが文筆家として自己や他者(読者)を生かす道なら、私は彼女の選択を応援したい。2022/12/26
☆よいこ
98
エッセイ。会社員と作家(詩と俳句)の二足の草鞋を履く著者の、友人関係やら家族の話やら日常のお話。読みやすく名言多し▽「十五億回の総心拍数が寿命だというのがうそでも、人はそれぞれ死ぬまでに食べるじゃがりこの本数が決まっているのではないだろうか」うどんで号泣。バエ子「これで思う存分後戻りできます」「友がみなわれよりえらく見ゆる日よ花を買ひ来て彼氏にLINE」▽4年間務めた会社を退職したらしい。エッセイしか読んだことないけど、専業作家になられるんですね楽しみです。2023/02/13
tenori
76
2022年の読み納め。くどうれいんさんのエッセイで締め。れいんさんは本当に普通の人。目線が低いから拾っている話題も日常的で特別ではない。それが楽しく惹き付けられるのは、彼女の言葉の引出しの多さ。私は勝手に「言葉の雫」と呼んでいるのだけれど、そもそも歌人であるから季節感やリズム感にもあふれているし、小難しい表現がない。そしてにじみ出る郷土愛。きっと彼女はどこにいても盛岡を感じているのだ。「書くこと」に専念すると決意したくどうれいんの紡ぐ言葉に、これからもずっと触れていたい。2022/12/31
konoha
62
れいんさんのエッセイはちゃきちゃきチャーミング。歌集は瑞々しく小説は透明感があり、「れいんさんは文化系女子最強」って言いたくなる。20代の仕事やプライベートに忙しく、ごちゃごちゃっとした感じがまぶしい。会社員と書くことを両立させて立派だと思う。後半は混沌として目が離せなくなった。震災への思い、芥川賞候補になった戸惑い。大きな出来事とささやかなエピソードを結びつける想像力がさすが。花を買ってお祝いする喜びを書く「祝福の速度」が好き。「わたしはお風呂がだいきらい」か。私もお風呂とたまにごはんも大嫌い!2022/11/30
夜長月🌙@5/19文学フリマQ38
62
くどうれいんさんのエッセイ第3弾。3冊目から読み始めてしまい1冊目から読みたいと強く思います。これは個人の日記ではないかと思うくらいさらけ出しています。盛岡での仕事(営業職)と作家業の両立についての葛藤や具体的すぎてちょっとびっくりする位の男性関係の話など。書きっぷりがいい。「耳朶の紫式部」のうどんの話が最高でした。2022/09/29