出版社内容情報
上野 誠[ウエノ マコト]
著・文・その他
内容説明
中学生のときに見た祖父の葬儀。長じて学者として迎えた墓じまい。そして母の老いと看取り。かつてと現在で湯潅はこんなに変わってしまった。外注化する死に対して我々はどうふるまうべきなのか。自らの体験と学問を通じて、誰もが身につまされる別れを思索する。第68回日本エッセイスト・クラブ賞受賞作。
目次
死の手触り(一九七三年八月十六日;葬式の「格」 ほか)
墓じまい前後(こげな立派な暮はなかばい;墓作りは長崎に学べ ほか)
死にたまふ母(兄のことば;三ヵ月ルール ほか)
われもまた逝く(柳田國男いわく;竹林の七賢と大伴旅人 ほか)
著者等紹介
上野誠[ウエノマコト]
1960年福岡県生まれ。國學院大學大学院文学研究科博士課程満期退学。博士(文学)。國學院大學教授(特別専任)。奈良大学名誉教授。第12回日本民俗学会研究奨励賞、第15回上代文学会賞、第7回角川財団学芸賞、第12回立命館白川静記念東洋文学文化賞、本書で第68回日本エッセイスト・クラブ賞受賞。万葉文化論の立場から、歴史学・民俗学・考古学などの研究を応用した『万葉集』の新しい読み方を提案(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ほう
31
福岡出身の上野氏のお墓は、とてつもなく大きく立派だったようです。祖父の念願が叶って造られたようですが、時代と共にその負担は大きくなり、とうとう墓じまいをする事になった様子が書かれています。一般庶民にとって墓の歴史は割と浅いものだと書かれていて驚きました。墓守と言う言葉に縛られている現代人もいる今を思うと、複雑な気がしますし、変わっていかざるを得ない時代とも思います。2023/05/07
アオイトリ
26
Amazonのオススメ)上野誠、初読。溺愛された末っ子らしく、明るい文体、正論を振りかざさない点に好感。ご自身の祖父から、祖母、父、母まで43年間にわたる家族の看取りと葬儀、墓の歴史と省察。「私は母を奈良に引き取った日から、演技を始めていたのではないか。孝行息子という役だ」に始まる「嘘と演技」の章は特に心に残りました。高齢者と暮らす家族にお勧めです。2023/02/01
PAO
19
「墓や寺が生きてゆくものの重荷となってはならない、と私は考えている」…著者が経験した祖父の葬儀の湯灌、祖父の悲願だった巨大な墓の墓じまい、母の介護と看取り…生きていくうえで避けられない老いと死。普段考えるのを避けるがゆえにいざという時にはお寺や親戚の言いなりになってしまいそうなこれらのことを万葉学者である著者は古典への知識と経験を元に生きてゆく者にとって最善の方法を模索し実行します。二百頁足らずの軽妙な筆で書かれたその姿はいつかは看取り看取られる私たちにその時の道筋と勇気を示してくれます。紛れもなく良書。2022/11/29
Masakazu Fujino
16
とても共感した。 著者と私より4学年下。同じ福岡県出身で同じ大学同じ学部(著者は日本文学科、私は史学科だが)。学生当時、名物教授であった、樋口清之さんの講義を受けたことを、懐かしく思い出した。 その國學院伝統の、民俗学的手法で、ご自身の祖父の死から母親の死に至るまでの、43年間の、死と葬儀、墓をめぐる話を説き起こしたもの。ご自身のことも率直に語られ、大変好感を持った。 今年の夏、まさに著者の故郷である朝倉市甘木を旅した。あのあたりに、著者の祖父の建てた大きな墓もあったんだな。2022/09/23
ポテンヒット
15
祖父と母の看取りと葬式、また故郷の墓じまいの実体験で感じたことがとても正直に書かれている。葬式、墓の変遷や墓の資本主義の話、介護は情報戦という話が印象に残った。墓が二階建てとは凄いな…。いつの間にか結婚式より葬式に出向く方が多くなりこれらの話が現実味を帯びてきた今日この頃、予備知識として参考になった。いつかは誰もが通る道とはいえ、なかなか大変だな…。2022/10/09