出版社内容情報
戸谷 洋志[トヤ ヒロシ]
著・文・その他
内容説明
スマートさとは、余計なものや苦痛を排除し、すべてを「合理的に最適化」する「賢さ」である。そうした思考/志向に駆り立てられ、突き詰めた果てに立ち現れる「悪」は現代人にとって必然なのか?システムの支配からの自由を求め「別の答え」を模索する真摯な試み。
目次
第1章 超スマート社会の倫理
第2章 「スマートさ」の定義
第3章 駆り立てる最適化
第4章 アイヒマンのロジスティクス
第5章 良心の最適化
第6章 「機械」への同調
第7章 満員電車の暴力性
第8章 システムの複数性
第9章 「ガジェット」としての生
著者等紹介
戸谷洋志[トヤヒロシ]
1988年、東京都世田谷区生まれ。大阪大学大学院博士課程修了。博士(文学)。現在、関西外国語大学准教授。専門は哲学、倫理学。現代思想を中心に、科学技術をめぐる倫理のあり方を研究している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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フム
39
出版記念としてアーレント研究の百木さんとの対談があると知り、オンラインで視聴した。日本政府は今後目指すべき未来を指し示すものとしてsociety5.0という理念を掲げ、その「超スマートな社会」の実現のため、様々な技術開発に巨額な資金を投じている。スマホに象徴される便利でスマート化された社会に不都合な事態つまり「悪」は存在しないものか、人間に牙を向かないものか、筆者は懸念する。そしてそのスマートな悪が存在した例として、アイヒマンのロジスティックなスマートさや満員電車の暴力性などを取り上げて→2022/06/28
ta_chanko
23
狩猟1.0⇒農耕2.0⇒工業3.0⇒情報4.0の次に到来する「Society5.0」の中で提唱される「超スマート」社会。その行き着く先はどのような社会か。きわめて効率的なユダヤ人迫害・虐殺システムを作り上げたアイヒマンの例を引き合いにしながら、過度な最適化・効率化の弊害を説く。「スマート化」とは、余分なものを排除し、人間があれこれ考えなくてもいいように自動的で閉鎖的なシステムを構築していくことでもある。それを防ぐには、異なる複数の価値観・世界観を「結ぶ」ことで、いつでもその間を移動可能なものにすること。2024/10/28
タカナとダイアローグ
16
図書館。ハンナ・アーレント特設コーナーより。smartって誰にとっても良い!的な思考停止への「危険性もあるよ」哲学。スマートの語源は痛みらしい。鋭い痛みに思考が支配される様が転じたとのこと。何かがロジスティクスに最大適応しているとスマートということであり、適応していないと弾かれる。アーレントやアンダースは人間の歯車化として危険視。アイヒマンは歯車としての悪。結びは、ガジェット。閉鎖性と解放性を結ぶ事。うーん哲学。戸谷先生は、誰もが自明(だとおもっている)テーマを哲学・思想の文脈で立ち止まるのが抜群にうまい2024/09/21
無重力蜜柑
15
テクノロジー全体主義批判。セールになってたから買って読んでみたけれど、ただただ陳腐。「Society5.0」や「超スマート社会」といった言葉を取り上げて現代性、実際性をがある議論に見せようとしているが、ハイデガーやアーレントやイリイチの技術論、政治哲学を取り上げてナチと結びつけて概念的な空中戦をやってるだけ。具体性がなさすぎてスマート概念の技術哲学とは到底言えないと思う。あと大陸哲学(でかい言葉)系の人間がやる「語源から解釈する」やつ、意味あるんですかって思う。2022/06/15
kubottar
14
アイヒマン裁判が面白い。スマートな悪を作るのは国家のシステムか。2022/12/22
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