内容説明
博士号取得後、とある事件をきっかけに大学を辞めて30歳で北海道警察に入り、今はベテラン刑事の瀧本について現場経験を積んでいる沢村依理子。ある日、5年前に未解決となっていた誘拐事件の被害者、島崎陽菜の遺体が発見される。犯人と思われた男はすでに死亡。まさか共犯者が?捜査本部が設置されるも、再び未解決のまま解散。しばらくのち、その誘拐事件の捜査資料が漏洩し、なんと沢村は漏洩犯としての疑いをかけられることに。果たして沢村の運命は、そして一連の事件の真相とは。第67回江戸川乱歩賞受賞作!
著者等紹介
伏尾美紀[フシオミキ]
1967年北海道生まれ。北海道在住。会社員を経て現在は産業翻訳者。『北緯43度のコールドケース』で第67回江戸川乱歩賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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夢追人009
447
2021年度の乱歩賞受賞作で著者の伏尾美紀さんは54歳と人生の大ベテランの方でしたね。選評では文章が下手で読み難いとか、あれこれ詰め込み過ぎとか厳しい意見が書かれていましたが私は全く気にならず全編を通して面白く読みましたね。ヒロインの沢村依理子は36歳で、大学院の博士号まで取った後に30歳で警察に入った変わり種の経歴の持主ですね。本書は北海道を舞台にした警察小説の秀作で、5年前に起きた幼女誘拐失踪事件の女児が死体で見つかり再び未解決事件が動き出します。沢村は道警の男社会で苦難に耐えて負けずに頑張るのです。2023/02/19
starbro
385
毎年、江戸川乱歩賞受賞作を楽しみにしています。先日読んだ『老虎残夢』に続いて、もう一つの受賞作を読みました。選評で候補作の中では一番下手な小説と評されていたので、どれだけ酷いのかと思っていたら、意外と普通でした(笑)中身よりも当初のタイトル「センパーファイ―常に忠誠を―」が酷かった(意味不明)です。中身は、新鮮味に欠けるものの、江戸川乱歩賞受賞作らしい作品、『老虎残夢』よりも、私は本書を評価いたします。 http://www.mystery.or.jp/prize/detail/206712021/11/02
パトラッシュ
283
ミステリ小説では警察による犯罪捜査が当然出てくるが、組織の内情をも描く正統派の警察小説は乱歩賞受賞作で初。未解決の誘拐事件に絡んで北海道警内部で起こった派閥抗争に巻き込まれた異色の経歴を持つ女性刑事の沢村が、相次ぐ思惑や妨害や反感をはねのけて闘う姿が鮮烈だ。冬の北海道の厳しい自然描写と事件の意外な真相が相まって、完成度の高い作品になっている。沢村の排除を図る側のパワハラそのもののやり方など昭和のドラマかと思えるが、自分たちに都合の良い官僚機構を守ろうとする上層部への職を賭けた反逆はさわやかな読後感を残す。2021/11/09
いつでも母さん
203
【第67回江戸川乱歩賞受賞作】博士号取得後、大学を辞め30歳で道警入りした沢村依理子。ある日5年前の未解決事件の被害者・陽菜(当時3歳)の遺体が発見されたーこの捜査が何処へ結びつくのか、異動させられた依理子の抱えてるものもなかなか見えず、遅々として進まない展開にじりじりモヤモヤだったが、もう一人行方不明の幼子の存在辺りから一気に加速して読み切った。犯人の性格や刑事たちの絡みも面白かった。この道を続けるだろうの依理子のこれからを、もう少し読んでみたいと思わせる新しい作家が誕生した。2021/10/31
fuku3
189
2021.10.17読了。第67回江戸川乱歩賞受賞。とても面白かったが!総評にも有る様に読み手に不親切で読み辛い!新人に有りがちな何でもかんでも全て入れて仕舞え!この辺は編集者がもっとちゃんと仕事をすればもっといい作品になった筈!380頁は長過ぎ300頁以下にはなった筈!プロットは素晴らしいし主人公や端役の書き分けがとてもしっかり出来ている!各キャラの個性が際立ちている!メインの誘拐事件の組み立てや事件解決の筋道等は齟齬無く伏線の回収もスムーズに出来ていた!取調室の真犯人との対決場面は迫力が有り感動もの!2021/10/17