出版社内容情報
大澤 真幸[オオサワ マサチ]
著・文・その他
内容説明
近代科学と小説―資本主義という宗教の二面性を照らし出す二つの言説。近代はすでに「われわれの時代」である。「自由」「平等」「人権」…貨幣経済の下に生きる現在のわれわれの価値観をなす概念はもとより、感受性すらも主としてこの時代に作られ、ずっと維持されてきた。その根源に肉薄する。
目次
失敗した贋金作り
カトリックの政治革命/プロテスタントの精神革命
貨幣論への迂回
貨幣の抽象化作用
資本主義の猥褻な精神
黙示録的ゲーム
“金銀/紙幣”としての貨幣
商品の救済/人間の救済
召命と階級
終わりなき終わり
予定説の効果
予定説がとり残したもの
〈増殖する知〉のふしぎ
銀行というなぞ
二つのスペキュレーション
剰余権力
〈主体〉の産出
最初の小説
小説の不安
神に見捨てられた世界の叙事詩…なのか?
虚構性の勃興
役に立たない辞典
小説的衝動の帰趨
著者等紹介
大澤真幸[オオサワマサチ]
1958年、長野県生まれ。東京大学大学院社会学研究科博士課程修了。社会学博士。思想誌『THINKING「0」』主宰。2007年『ナショナリズムの由来』で毎日出版文化賞、2015年『自由という牢獄』で河合隼雄学芸賞をそれぞれ受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ころこ
39
はじめてこのシリーズを読みますが、興味のある読者には途中からでも読めるとお伝えしたいと思います。本書で論じられている資本主義とは何か、貨幣とは何かは著者の古い本『資本主義のパラドックス』での議論と同じで、文中に『近世編』の補足で引用された箇所も同書の別の章での議論そのままでした。つまり、著者の着想は若い頃とそう変わりが無い。それを若い時に考えていたこと自体が凄いことですが、以前は濃密で理解し辛かった。しかし、今回は口語的で平易に改良されています。「、これである。」という大澤語は、重要箇所の目印です。本書で2021/05/14
kuppy
2
何度も意識が飛んでしまうほど私には難解なところもありましたが、近代がどのように形作られていったを知るヒントとなった。メインの流れとしては最後の審判と神しか知ることの出来ないその結果、結果が決まっていても天国に行けることを信じ日々告白を重ねていくプロテスタンティズム、ただ小さな審判はサッカーのゴールのように繰り返される。そこから資本主義、現代小説、近代科学などが影響を受けながら進展していく。欧米の映画や小説には、終末思想、予定されている未来とその超克、偶然性などその手の要素がちりばめられていると感じる。2021/08/26
MrO
1
小説かあ2022/09/11
kumoi
0
資本主義に対する論考が印象に残った。労働者の使用価値は、価値体系を先取りすることにあるらしい。2023/10/23
YASU
0
プロテスタントにおける神=第三者の審級をキー概念に,資本の無限増殖論じる前半はとても分かり易く,その勢いで六百頁近い大部を一気に読むことができた.終盤の小説論はちょっと難解.私の理解力不足かもしれないが.属性に縛られていた諸個人が自由を獲得し,あらゆる(無限の,かつ虚構の)可能性を獲得した,それが近代的主体の誕生であった,と理解した.2022/01/23