出版社内容情報
2020年夏公開映画「おかあさんの被爆ピアノ」(主演 佐野史郎・武藤十夢)のノベライズ
昭和20年8月6日の広島への原爆投下により被爆した「被爆ピアノ」。
被爆2世の調律師・矢川光則は、持ち主から託されたピアノを、修理・調律し、自ら運転するトラックに載せて全国を廻り、被爆ピアノコンサートを行っていた。
一方、東京生まれの大学生・江口菜々子は、母・久美子が被爆ピアノを寄贈していたことを知り、被爆ピアノコンサートを訪れ、矢川と知り合う。矢川を通して、被爆ピアノや広島のことを考えるようになった菜々子は、母、祖母へとつながる自らのルーツをたどる旅をはじめる──。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
へくとぱすかる
38
祖母の遺した被爆ピアノを弾きたいと願う大学生の菜々子と、なぜか原爆にかかわらせたくない母の久美子との葛藤。広島で調律師として工房を営む矢川は、ふとした偶然から、菜々子の祖母のピアノと同時に、二人のあいだも修復していくことになる。原爆体験を孫の世代はどのように知り、受け止めるかというテーマを、淡々とした物語の流れの中で、あくまで現在の問題として描いている。映画のノベライズらしくスチール写真がリアル。印象的なのは矢川が菜々子にガラス片を見せるところ。ピアノから出てきたというくだりに驚く。そうなんだ被爆ピアノ!2025/05/12
美月0217
29
被爆ギターに続いてこの本も図書館予約で読んでみた。 広島は実はよく行くことが多くて平和祈念館では心が押しつぶされそうになったりしたことがある・・被爆・・ 被爆者・・2世・・3世と子供には伝えたくないこともあるんだろう・・何百年も前の話ではない・・何十年か前の話・・ 平和な日本・・でもこういうことをその日だけでも良いので考えてみてほしいし、考えていきたいと思う。2020/10/18
マイケル
12
被爆3世の娘が被爆ピアノコンサートをきっかけにヒロシマについて考える音楽物語。峠三吉「原爆詩集」や第五福竜丸も登場。最初は広島行きに反対だった広島出身の母親が最後は応援。祖母のノートにベートーヴェン「第九」歌詞の書かれた昭和50年はカープのセリーグ初優勝の年。調律師の広島弁が懐かしい。昔、広電で毎日原爆ドームの前を通って学校に通っていた頃を思い出す。ベートーヴェンの「悲愴」ソナタを聴きたくなる本。2021年1月22日核兵器禁止条約発効。日本政府は核廃絶に向けて何もしないのか。バイデン大統領に長崎訪問を。2021/01/27
ゆみりん
8
被爆ピアノがならす音、奏でる音楽はどのように心に響くのだろう。 私も聴いてみたい。戦争を語るのは辛いこと。被爆者のほとんどは何も語りたがらず、語り部になる人はごくわずかだという。でも、私たちは知らないといけない。そして過ちを繰り返してはいけない。 被爆ピアノは戦争の愚かさを、そして平和の大切さを美しい音で雄弁に語るのだろう。2024/07/27
みるふぇ
4
たまたま手元にあったので、さらっと流し読み。何年か前に映画になっていた本なのですね!広島 原爆 戦争、忘れてはならない歴史。一瞬にして人生を奪われた人たちがたくさんいたこと、そしてその人たちは何の罪もなかった。戦争の無念さや人々の悲痛な想いを、被爆ピアノが伝えてくれた。2022/10/30