内容説明
時代を超えた、時代にふさわしい名著を、新訳で!崩壊の危機に瀕するハーレムの運命やいかに?
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
刳森伸一
5
事実上の亡命としてパリに渡ったペルシア人貴族2人がやり取りした書簡集という体裁の書簡体小説。ペルシア人にとって異国のフランスでの見聞や哲学的見解、そして、故郷ペルシアに残したハーレムの女性や宦官との会話や命令など内容は多岐に渡る。ハーレムを抱える男とそれに従う女という構図が鼻じらむところもあるが、それが最後にどんでん返しされるので痛快だった。2021/03/13
ミスター
4
これほど繊細なテキストもないと思った。外部の視座から潜在的な社会風俗の機能を明るみに出している点では社会学のテキストともとれるが、たほうで遠く離れた出先から自分のハーレムの状況に不安を覚え、ついには専制領主と化す主人公の姿は不安を覚えるドストエフスキー的な心理小説、サスペンス小説ともいえる。ある種、読み応えとしてはフローベールに近いものがあった、バークやヒュームに影響を与えたテキストとしても必読。2020/10/26
馬咲
2
後年に『法の精神』で示される、共同体の習俗と社会構造を連関させて在るべき政体を探究するという思想の萌芽がこの時すでに見出だせる。しかし本書はそういった単なる後発の主著の踏み台的な価値に止まらず、後年探究が深まっていくが故にそこからこぼれ落ちていった自由な視点と文学形式ならではのユーモアが光る、独自の魅力を有した作品と言える。自国と異なるヨーロッパ習俗への理解が深まった結果両者の板挟みとなり、亡命前より却って苦悩に苛まれるようになったペルシア人ユズベクの姿は、現代人には無縁の様子、とは到底言えないだろう。2022/09/17
風鈴
2
やっと何とか読み終わった。三権分立のモンテスキュー教科書で習ったなと。架空のペルシア貴族ユズベク、リカを主役にヨーロッパに滞在しながら友人知人との手紙のやりとり集。知の探究の為イスラム教徒がキリスト教国で感じる学びは作者の想像興味深い。神の存在、哲学的な命題はかなり理解するのに苦労した。主人不在のハーレムの妻達、彼女達を管理する宦官が気の毒であった。2020/09/13
ヒデアキ
1
モンテスキュー三部作の一つ。 中東社会の専制君主ユズベクと学者のリカがヨーロッパを周遊して学んだことを知人友人宛に手紙で伝えるという体でヨーロッパ・中東文明の違いや権利・自由・平等・政治体制・宗教など当時のタブーに触れて間接的に社会批判をするという内容。モンテスキューの構想力には驚く。三部作の中で圧倒的に面白い。2024/05/23