出版社内容情報
川端康成からその才を認められた作家・岡本かの子。世間から奇矯と見られながらも数々の名作を残した生涯を描く、評伝小説の傑作!
内容説明
歌人、仏教研究家でもあり、晩年は小説で大いに注目を集めた女性作家・岡本かの子。だがその創作過程は尋常ではなかった。人気漫画家・岡本一平の妻でありながら、二人の美男子に惚れこみ同居させていた。奇矯なこの共同生活から豊潤な芸術が生み出された。天衣無縫にして稀有なその生涯を描いた、評伝小説の傑作!
著者等紹介
瀬戸内寂聴[セトウチジャクチョウ]
1922年、徳島県生まれ。東京女子大学卒。’57年「女子大生・曲愛玲」で新潮社同人雑誌賞、’61年『田村俊子』で田村俊子賞、’63年『夏の終り』で女流文学賞を受賞。’73年に平泉・中尊寺で得度、法名・寂聴となる(旧名・晴美)。’92年『花に問え』で谷崎潤一郎賞、’96年『白道』で芸術選奨文部大臣賞、2001年『場所』で野間文芸賞、’11年『風景』で泉鏡花文学賞を受賞。’98年『源氏物語』現代語訳を完訳。’06年、文化勲章受章(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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たま
29
瀬戸内寂聴さんが亡くなった。チャーミングで親しみやすい方としてメディアを通しての知名度は高かったと思うが、作品はどれだけ読まれているだろうか。かくいう私も読んだのはこの一冊だけ、岡本かの子という凄まじい人間に真っ向から取り組んだ重厚長大の評伝。SNSでは伝わらない人間の厚みに圧倒される。2021/11/14
しんすけ
17
一平の『かの子の記』に、重ねるような読書だった。 一平が、いかにかの子を美化したかを知ることも多かったが、それなりの一平の真実だと思えたものである。 真の姿が分かりにくいかの子だが、可愛い女だったと思う。 後半では、それは一平の妄想にすぎなっかたのでないかと、思うことも多かったが、人は真実だけで生きられるものはない。 かの子だって、一平を「パパ」と呼んで甘えたのも、演技だったのかもしれない。それでいいじゃあないか。だれを傷つけるわけでもないのだから。 かの子も一平も羨ましい生き方をしたのだと思う。2022/10/04
amanon
6
相手を破滅に陥れないファム・ファタールというべきか。とにかくかの子の特異かつ型破りな性格、言動、そして何よりその才能のありように惹きつけられて、ほぼ一気読み。何より絶句したのは夫と二人の愛人との同居生活。普通では考えられない関係性を長年に渡って維持してきたというのも、驚きだが、その夫と二人の愛人の間には同志愛的なものさえ共有していたというのだから、想像を絶する。ただ、普通だったら寝取られ亭主的な存在になるはずの夫一平が、あくまで献身的にかの子につくすその姿に、こういうのもありかな…と思ってしまった。2025/02/07
ミコヤン・グレビッチ
5
岡本かの子の伝記小説。新潮文庫の短篇集「老妓抄」を読んだときには、かの子がこれほど特異なパーソナリティとはまったく想像できなかった。文庫で六百頁を超える大部ながら、結婚直後の不幸な時代、関東大震災、一家での洋行と波乱万丈で、寂聴さんの筆力もあって読みやすく、かつ飽きさせない。終盤は主要な小説作品の精髄の紹介と解説にもなっている。これから読まれる方のために詳細は記さないが、かの子の「密葬」の場面は壮絶の一語に尽きる。そして、かの子の没後、太平洋戦争を挟む時期の岡本一平らの後日談には祭りのあとの寂寥感が漂う。2024/12/02
バーベナ
5
夫と愛人と息子と同居というだけで(いやそれだけで十分かも)スキャンダラスな印象だったかの子さん。でも、夫:一平の作品だったのかもと考えると納得。著者の寂聴さんも含めて、芸術家というのは本当にエネルギッシュ。そして不思議な人たちだと思う。今月、氾濫してしまった多摩川はかの子さんゆかりの地。二子新地には息子:太郎作成の文学碑もあるそう。2019/10/27