出版社内容情報
吉川 永青[ヨシカワ ナガハル]
著・文・その他
内容説明
東軍か西軍か、徳川か豊臣かなどは関係ない。ある者は己の野心のため、ある者は義理のため、またある者は身内を奪われた復讐のため。主戦場に行かずとも、全国の武将はそれぞれの関ヶ原を戦った。時代の変わり目で老いに苦しみ、謀略に悩んだ名将を待ち受ける運命とは―気鋭の時代小説家による連作短編集。
著者等紹介
吉川永青[ヨシカワナガハル]
1968年東京都生まれ。横浜国立大学経営学部卒業。2010年「我が糸は誰を操る」で第5回小説現代長編新人賞奨励賞を受賞。同作は、『戯史三國志 我が糸は誰を操る』と改題し、翌年に刊行。’16年『闘鬼斎藤一』で第4回野村胡堂賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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とん大西
106
2作続けて吉川永青さん読了。読み応えありました。東西が激突した関ヶ原。が、その激突の最中に北天の地で、或いは海峡を隔てた九州で威勢をあげた強者ども。家康への義理、秀吉への慕情、三成への怨恨。天秤にかけられる公と私。それぞれが抱くそれぞれの思いが裏の関ヶ原で弾ける。…にしても関ヶ原となると群像劇で長編で、が醍醐味のような気もしますが、短編ならではの時間軸で武将達の悲哀や苦悩を描いた本作はお見事です。佐竹義宣の「義理義理右京」は地味ながら座り良い読み心地。「背いてこその~」は真田昌幸の化け札がいぶし銀でした。2019/09/15
yoshida
84
関ヶ原合戦の裏。九州、信濃、常陸、出羽、岐阜等。其々の領国で、思惑を秘め戦った大名達を描く。黒田如水、真田昌幸、佐竹義宣、最上義光、織田秀信。豊家も末期から描かれ、秀吉は老耄している。豊家の弱体化に繋がった朝鮮征伐。無体だった秀次事件。石田三成が苦慮しながら対処する。秀吉を恨む最上義光。三成の隠された誠と義を知る佐竹義宣や織田秀信。斬新な関ヶ原の描き方と思う。最上は豊家に復讐する。その後の歴史では子が徳川に取潰される悲哀がある。佐竹義宣の義。信長の嫡孫だが、三成の厚情に応える織田秀信。この三篇が特に良い。2023/05/03
岡本
71
Kindle。関ヶ原前後での各武将達の短編集。関ヶ原でのイメージがない佐竹義宣や悪く書かれがちな織田秀信などの章は新鮮。他の面々も史実に沿っているものの内面を細かく書かれているので入り込んでしまう。良作。2024/11/17
Die-Go
56
図書館本。その後の天下の行方を決したとも名高い関ヶ原の合戦。その合戦に参戦せずとも熱い思いを持ち、その帰趨に大なり小なりの影響を与えた武将達の悲喜こもごもの生涯を描く短編集。歴史物を書き慣れた著者だけに、良く練られているし、飽きさせない筆致ではあるが、いかんせん短編であるため、もうちょっと長く読みたい人物も中にはいた。★★★★☆2019/02/24
seacalf
40
職場の本好きのボスから無言で手渡された一冊。またむりぐり読めというのか笑。自分では選ばない類いだが、ものは試し。題名の通り、関ヶ原に至る前の武将達の権謀術数模様を描く。黒田如水、真田昌幸辺りは有名として、佐竹義宣、細川幽斎、織田秀信、それぞれ面白かった。最上義光は気の毒。新たな解釈を交えて、地味ながらもいぶし銀な仕上がり。せっかく目新しい切り口を披露しているのに秀吉は猿、家康は狸。話し言葉等々、非常に古めかしいままなのが残念。全編通して登場させているのに、三成は地味な扱いなんだよなあ。魅力半減で勿体ない。2019/02/23