出版社内容情報
岡本 隆司[オカモト タカシ]
著・文・その他
内容説明
リベラリスト・石橋湛山、巨人・内藤湖南、「王道政治」を「満洲国」に見ようとした矢野仁一、「科学的方法」で中国社会を解こうとした橘樸、そして桑原隲蔵、仁井田陞、宮崎市定、谷川道雄などなど―。東洋史の学統に連なる多士済々の俊秀たちは、いかに中国と格闘したか。その論述をていねいに読み直し、「日本人と中国」という、有史以来の大テーマに挑む力作。
目次
第1章 石橋湛山―小日本主義と中国社会(「一切を棄つるの覚悟」;中国観の深層)
第2章 矢野仁一―王道政治と中国社会(石橋湛山との分岐;「王道楽土」;中国社会の停滞をめぐって)
第3章 内藤湖南―「近世」論と中国社会(和漢の「近世」;東洋史学の草創;唐宋変革と中国社会)
第4章 橘樸―「ギルド」と中国社会(中国社会を評価する;「方向転換」―「ギルド」から「農民自治」へ;中国の「ギルド」)
第5章 時代区分論争(分岐する視座;「歴研派」;論争をもたらしたもの;谷川道雄)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
BLACK無糖好き
26
近代日本の言論人・知識人は、中国をどのように見てきたのか。本書では主に石橋湛山、矢野仁一、内藤湖南、橘樸、谷川道雄らの著述を紐解きながら戦前・戦中・戦後の時代背景も合わせて考察している。とりわけ参考になったのは「唐宋変革」(唐代までを貴族支配の[中世]宋代以降は平民が勃興した[近世]と捉える学説)をめぐる学会内部での論争とその影響、及び東洋史学の成り立ちについての解説。◆時代区分に関する論争や中国社会の「共同体」の概念に関する論争なども、学問上どこまで西洋モデルを適用させるかが問題の本質のようだ。2018/08/27
さとうしん
17
戦前・戦後の主に東洋史学者による中国観や議論を追う。明清をつきつめて研究しなかった内藤湖南と明清を専門とした矢野仁一との対比、時代区分論争で対立しているようで共通の議論の土台に乗っていた歴研派と京都学派の宮崎市定の話など、話題の詰め込みようを見ると、戦前・戦中編と戦後編で分冊した方が良かったようにも思う。「中国という対象は、きわめて難解」と言うが、アメリカや西欧、インドなど他地域を対象とするより難解なのだろうか?いずれにせよ問題なのは、むすびのタイトルにあるように「日本人のまなざし」なのだろうが…2018/07/18
かんがく
15
明治〜現代にかけてのジャーナリズムや研究者が、中国をどのように捉えてきたかという通史。近くて遠い近代中国についての様々な学説は、現代中国を捉える上でも有用なものである。2019/07/14
Kai Kajitani
15
この本は戦後日本の「進歩派」から「リベラル」に至る政治的立場の脆弱さを、その「中国観」の不在に求めるものとして読むことができる。典型的なのが石橋湛山である。戦前の石橋は中国を大して知らなかったがゆえにそのナショナリズムを日本と同一視した小日本主義を唱え、戦後の平和主義のアイコンとなりえた。対照的なのが中国を「知りすぎていた」がゆえに日本の大陸侵略にコミットした矢野仁一だ。しかし、中国の影響力が拡大した現在、湛山的な中国と日本を同一視するリベラリズムは果たして有効か。本書はそう問いかけているように思える。2018/08/18
ピオリーヌ
14
今まで漠然としか知らなかった時代区分論争が詳しく解説され、大変勉強になった。34歳の若さで亡くなった前田尚典「東アジアに於ける古代の終末」が大きな影響を与えたとは。また必読の文献として岸本美緒『地域社会論再考 明清史論集2』島田虔次「序論」『アジア歴史研究入門 1 中国Ⅰ』島田虔次『中国の伝統思想』吉川幸次郎『支那人の古典とその生活』が挙げられる。谷川道雄『隋唐帝国形成史論』も挙げられるが、この本、最寄りの図書館にあってもう十数年も気になっているのだが未だ未読。そろそろ読みたいところ。2023/08/26
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- 和書
- がっぴちゃん