出版社内容情報
植木 雅俊[ウエキ マサトシ]
著・文・その他
内容説明
女性は成仏できない(女人五障)、男性に変じて成仏できる(変成男子)とし、父・夫・子に従え(三従)と唱える仏教には「女性差別だ」と批判がある。しかし釈尊はそもそも、真理に目覚めた者、すなわちブッダには誰でもなれる、と説いたのではなかったか?サンスクリットの原典に立ち返り、仏教本来の「女性観」と、性差別を乗り越える道を解明する。
目次
「仏教とジェンダー」研究の略史
仏教の基本思想と女性の平等
原始仏典の溌刺とした女性たち
ヒンドゥー社会の女性蔑視
部派分裂とともに加速する女性軽視
大乗仏教による女性の地位回復
「変成男子」の意味すること
常不軽菩薩の振る舞いに見る男女平等
「善男子・善女人」に見る男女平等
平等の根拠としての一仏乗〔ほか〕
著者等紹介
植木雅俊[ウエキマサトシ]
1951年、長崎県島原市生まれ。仏教思想研究家。九州大学理学部卒。理学修士(九州大学)、文学修士(東洋大学)、人文科学博士(お茶の水女子大学)。中村元のもとでインド思想・仏教思想、サンスクリット語を学ぶ(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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松本直哉
20
生れではなく行いによって、人は貴くも賤しくもなるというのが仏陀の教えの根源ならば、男女差別もありえなかったのに、いつのまにか女は成仏できないとなったのは、仏陀の後継者が保守化してバラモン的な性差別を仏教に持ち込んだためだった。既成の差別を全否定する仏陀の教えがあまりに革命的なのでその後のインドで受容されなかったのもうなずける。聖書の場合と同じく仏典も、どこまでが仏陀の肉声でどこからが後世の加筆かの問題が起こるが、比較的肉声をよく伝えるパーリ語の文献をたどりながら、仏教の原初的な姿を復元する試みが面白かった2019/10/31
南北
20
仏教は女性差別をしているという見解が仏教学者からも出ていますが、それに対して著者は特にインドの仏教について、法華経をサンスクリット原典から読み解いて、反論しています。一口に仏教での女性差別といっても、釈尊の女性観と小乗仏教や大乗仏教の女性観、さらには法華経の女性観はそれぞれ異なっています。インド社会では古代からあった女性差別の傾向を釈尊が否定したものの、小乗仏教が盛んになると男性出家者中心の考えになり、大乗仏教でそれを克服しようとしつつも残っていた男性出家者への逆差別を法華経が克服したということです。2019/06/02
灯子
3
知人に勧めてもらい購入。 著者の植木先生は、原始仏教の大御所。 仏教には瞑想が主な宗派や、修行が主な宗派があるように、人それぞれ仏教への見方が異なる。 女性は成仏しない。 と説く考えは原典の原始仏教にはないことを、丁寧に説明されている。 なぜ仏教が生まれたのか。 知れば知るほど面白い。 仏教はまやかしの宗教かと勘違いしていた。2019/03/10
はちめ
3
著者が法華経の翻訳をサンスクリット語と中国語と両方から行った成果が現れている。日本や中国におけるこれまでの仏教探究は、原則として漢訳された仏典を基に行われてきたため、サンスクリット語の仏典に遡ったときにさまざまな矛盾に遭遇せざるを得なくなる。いわゆる大乗非仏のような議論が生じることになる。著者はこの問題にはあまり踏み込まないが仏教界は真摯に対応すべきだと思う。☆☆☆☆☆2018/12/30
tsubasa
2
たいへん面白かった。原典にあたることの大事さを感じる。大変だけれども。なにしろ仏教にも疎いのでいろいろとへへえ、となる。もう少し色々知りたいとも思うが、どこから読めばいいんだろう。常不軽菩薩の話が印象に残った。2023/03/14