内容説明
日本と外国をつなぐ「太平洋の橋」となりたいという若き日の大志は、後年、英文の『武士道』以下数多くの著作や国際連盟事務局次長としての活躍となって実を結んだ。在野の私人として生涯を送った札幌農学校の同期生内村鑑三とは対照的に、生涯を公人として過ごした新渡戸稲造(1862‐1933)の、教育論・人生論・デモクラシー論・国際関係論にわたる多面的な論稿を収める。
目次
今世風の教育
我が教育の欠陥
女子教育に就て
教育の目的
教育家の教育
教育の最大目的
教育の基礎は広かるべし
人本位の教育
道は何処にありや
新女子大学の創立に当って
人格の養成
武士道の山
イエスキリストの友誼
ソクラテス
「死」の問題に対して
信仰と慰安
人生の勝敗
読書と人生
人格を認知せざる国民
デモクラシーの要素
自由の真髄
平民道
新自由主義
人格の意義
新の愛国心
国際聯盟とは如何なものか
東西相触れて
民族優勢説の危険
国際的教育の設備
太平洋問題京都会議・開会の辞
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ちさと
27
新渡戸稲造の死生観が自分のそれとぴったり重なってた。「幽明とか、有無とかいうものは形而下の話で、精神上からいうたならば、生と死というものはさほど区別のあるものでない。」例え生きていたとしても意識にのぼらなければ死んでいるも同然で、例え死んでいても脳内で生き続けることができる。種と穂での生と死の関係性の喩えもうまく、さすが上手に説明するなぁ、お札にお顔が印刷されるはずだなぁと思いました。2019/01/15
おせきはん
6
教育論、人生論などをテーマとする講演録や論文がまとめて収録されています。平易な語り口ながら内容は奥が深く、読み進めるにつれて背筋が伸びる思いがしました。2017/12/06
朔望
4
まず、この書は教文館に出ている(二〇〇七年以前のもの)新渡戸稲造全集に当時収められてなかった講義録や論文をまとめたものであります。 本書は教育論、人生論、デモクラシー論、国際関係論と便宜上四つのセクションに分けられており、非常に良くまとめられています。 大先生の言葉には全く風化しないものであり、忘れられるべきものでないと思います。主にデモクラシー論に関しては、フランス革命前後から当時の国の情勢、当時の日本の特性などを実に良く考察されており、私としては政治論のレファレンスとしても実用的かと思います。2016/04/04
AZUMAX
3
久しぶりに大正教養主義的(修養主義的)な内容の本を読んだ。国際連盟事務局次長としての経験を踏まえたうえで、日本と他国の関係が難しい時期に語ったと思われる部分が興味深い。社会の右傾化、排外的な言説の高まりが見られる今だからこそ読み直し反省したい。全体として平易で軽妙な語り口でとても読みやすく面白かった。2012/11/29
青い砂時計
3
この『新渡戸稲造論集』は、普通のベストセラーが何冊束になってもかなわないほどの価値がある良書だと思います。まさに現代にこそあてはまる珠玉の言葉の数々が本中に埋まっています。紙幣の顔となった夏目漱石の『漱石文明論集』、福沢諭吉の『福翁自伝』と3冊合わせて読んだら、さらに「心の滋養」になる大変ぜいたくな読書の時間が過ごせると思います。2009/07/04
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