出版社内容情報
山川 方夫[ヤマカワ マサオ]
内容説明
自己中心的な生き方に固執する青年の下宿に土曜日ごとに現われる、かつて恋人だった人妻との異様な情事を通して、孤独な青年の荒寥とした精神風土を描いた「愛のごとく」。ほか「演技の果て」「その一年」「海岸公園」「クリスマスの贈物」「最初の秋」を収録。戦後の変転の中で青春を生き、交通事故で早世した山川方夫の傑作選。
著者等紹介
山川方夫[ヤマカワマサオ]
1930・2・25~1965・2・20。作家。東京生まれ。日本画家・山川秀峰の長男。慶應義塾大学大学院中退。1954年、田久保英夫、桂芳久と共に第三次「三田文学」を復刊、新人発掘に力を注ぎ、曾野綾子、江藤淳、坂上弘などの作品を掲載する。「演技の果て」「愛のごとく」などで芥川賞候補に4回、「クリスマスの贈物」で直木賞候補に1回なるが、受賞はならなかった。米国「LIFE」誌に短編の翻訳が掲載されるなど文学界で評価が高まるさなか、1965年2月、トラックに轢かれる交通事故に遭い死去。享年34(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ぐうぐう
18
山川方夫の小説を読むには、ある種の覚悟がいる。そこには山川の抱えた内面の葛藤が描かれているからだ。山川を苦しめたであろう強烈な自我が、小説という形で放たれている。しかし、だからといって私小説に堕ちないのが、彼の小説の特別な点だ。私小説という酔いがまるでない。それは山川が、自身を観察し、小説を作り上げているからだ。きっと山川は、小説を書くことで救われていたはずだ。だからこそ、死を書くことすらも厭わなかった。死を書くことで、死から解放される、そんな効用もあったに違いない。(つづく)2016/06/21
原玉幸子
14
早逝した著者本人の家庭環境を題材にした私小説の風が何篇にも亘っていて、又、戦前からの流れの文壇の色濃い感じがする、まぁ「ザ・昭和」、「ザ・孤独」でした。「余り登場人物を死なせないで欲しいなぁ」と思うのはさて措き、「自分は醒めている」、「女性に愛情なんか感じない」等と嘯きながら、厭世的退廃的に世の中を見つつも、女性を愛で想わずにいられない男性の所作が随所に盛り込まれている「鉄板」は、「四十五十と円熟味が増せばもっといい小説が書けたのになぁ」と思う、返す返す「惜しい」作家の中篇作品集です。(◎2020年・冬)2021/01/08
Ribes triste
10
読んでいて、時折哀しい孤独に触れる。自分を束縛するすべてから逃走したいと望みながら、一方でそういう自分のあり方を痛烈に批判している。行き場の無い自我を抱えた苦しみを理解できるのは自分しかいない。自己弁護に走ることなく何処か諦観している。この人が40代まで生きていたら、どんな小説を書いたのだろう。2016/08/24
押さない
3
ものすごく大まかに言うと「ガッシ!ボカッ!」アタシは死んだ。スイーツ(笑)と同じ分類といえるのではないか。2021/04/30