出版社内容情報
抜き差しならない状況に追い込まれた人たちの心を見つめ真実にたどり着く異色の刑事・夏目信人。『刑事のまなざし』に次ぐ第二短編集抜き差しならない状況に追い込まれた人たちの心を見つめ真実にたどり着く異色の刑事・夏目信人。『刑事のまなざし』に次ぐ第二短編集
無縁
不惑
被疑者死亡
終の住処
刑事の約束
薬丸 岳[ヤクマル ガク]
著・文・その他
内容説明
万引き事件を起こした少年は、得体の知れない女とひっそり暮らす無戸籍児童だった。憐れむべき存在かと思えた少年はしかし、刑事・夏目の捜査で予想外の相貌をみせる(「無縁」)。割り切れない事情が、時にやりきれない犯罪を生む現代。絶望がしのび寄る乾いた世の中に、わずかな希望のありかを探る傑作短編集。
著者等紹介
薬丸岳[ヤクマルガク]
1969年兵庫県明石市生まれ。駒澤大学高等学校卒業。2005年、『天使のナイフ』(講談社文庫)で第51回江戸川乱歩賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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乱読太郎の積んでる本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おしゃべりメガネ
208
夏目さんシリーズ第3弾です。『刑事のまなざし』で既にかなり重厚な人間ドラマにミステリーをしっかりからめた素晴らしい作品を送り出してきていましたが、本作もまったくひけをとらない素晴らしい短編集です。今作も相変わらずハッピーな結末は少ないですが、それはそれで深い人間ドラマを堪能できるありがたみが十分に伝わります。特に『まなざし』で収録されていた「オムライス」のその後がえががかれており、かなり強い衝撃を受けました。単純に事件だけを解決するワケではなく、関わった人々のココロの闇も解決する夏目刑事に感服しました。2018/02/28
nobby
185
シリーズ第3弾。やはり夏目刑事の活躍は短編の方が似合う。そのものぐささが、人が見逃しがちな気付きをより引き立たせる。各話最後の最後に明確になる一捻りがいいが、その真実は胸苦しく刹那は極まる…ケアマネという仕事柄「終の住処」はまさに自身と重ねながら読んだのが印象的。認知症の母といえども子を想う気持ちに思わず納得。何と言っても第1弾収録「オムライス」続編な「刑事の約束」が重過ぎる…一見明るい兆しと思える娘の今後も含め、どれだけ重荷を背負い続けていってしまうのか…2016/09/01
hit4papa
170
『刑事のまなざし』、『その鏡は嘘をつく』に続く、刑事 夏目信人シリーズの第三弾。これまでの登場人物たちが顔を出す、ファンには嬉しい短編集です。本作品集では、親子の愛をテーマにした内容が多いのですが、そこは薬丸岳、捻りが効いています。犯罪加害者への復讐を企てる「不惑」は、被害者周辺の呪縛という問題提起と受け止めました。『刑事のまなざし』の問題作「オムライス」の後日談であるタイトル作「刑事の約束」は、さらに重い内容となっています。最終話で夏目には嬉しい報がもたらされます。今後の展開に期待がたかまります。2020/01/13
mmts(マミタス)
156
やっぱり"夏目さんのまなざし"には圧巻でした。いかにもな警察小説は苦手ですから、どうしても「夏目さんシリーズ」ばっかり読み漁りました。印象的だったものは「終の住処」でした。まさか"老害お婆ちゃん"だと思いきや、ビックリしました。涙腺が脆いせいか、あという間に泣きじゃくってしまいました。「刑事の約束」にはあの裕馬くんでした。復讐したい気持ちは分かりますが、あのような憎悪の絆は悲しくなりました。トラウマあるから、きっと誰かを愛せるだろうし…。そして、絵美ちゃんにはねぇ。とにもかくにも、ひたすら感動しました。2016/10/29
イアン
151
★★★★★★★★☆☆夏目シリーズ第3弾となる短編集。殺人容疑で逮捕状が出ていた男が逃走中に轢死する。被疑者死亡で幕引きを図ろうとする上層部だったが、東池袋署の刑事・夏目は男の所持品に疑問を抱き…(「被疑者死亡」)。ただ事件を解決するだけでなく、その裏に隠された動機や人々の想いを並外れた洞察力を持つ夏目が拾い上げていく。どんでん返しの要素は抑えめだが、いずれも長編になり得るような濃密なプロットに驚く。「苛烈な運命を強いられた人間がどうすればおぞましい感情を打ち消せるか」を問われた際に放った夏目の一言が深い。2023/07/01