講談社学術文庫<br> 江戸の花鳥画―博物学をめぐる文化とその表象

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講談社学術文庫
江戸の花鳥画―博物学をめぐる文化とその表象

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  • サイズ 文庫判/ページ数 536p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784062924122
  • NDC分類 721.025
  • Cコード C0171

出版社内容情報

博物学の隆盛に注目し、「花鳥画」にまったく新しいまなざしをそそぐことに成功した記念碑的著作、ついに文庫化! 図版多数収録。1995年度のサントリー学芸賞(芸術・文学部門)を受賞した本書は、それまで注目されることのなかった花木や草木、動物、虫魚など、あらゆる生物を対象にした「花鳥画」と呼ばれるジャンルを取り上げる。
従来の「花鳥画」という概念には、色彩豊かで精密な写実的表現の絵画も、墨一色による水墨の技法による絵画もいっしょくたに含められていた。著者はここに一つの大胆な補助線を引いてみせる。そのとき注目されたのが、江戸後期に大名や学者から庶民に至るまで広がっていった動植物の生態への関心と、それゆえになされた飼育や栽培だった。その延長線上にあるのが、江戸時代の「博物学」の隆盛である。
著者は本書の冒頭でこう宣言する。「本書を「江戸の花鳥画」と題したのは、あらゆる動植物へ向けられた江戸の画家たちの視線を、当時の博物学隆盛の文化背景の中に再発見しようとする試みのためである。そしてまた科学と芸術が密接に連関しながら育む新しい思潮の中で、古来より描き続けられてきた「花鳥」画が、科学と芸術とが特に接近した江戸時代においていかなる様相を呈していたかを明らかにするためでもある」。
こうして本書は、それまで誰も思いつきすらしなかった視線を生み出し、「花鳥画」という言葉にまったく新しい意味を与えた。
現在、日本では博物図譜のジャンルは多くの人に知られ、たくさんの展覧会が開かれている。その大きな突破口を開いた記念碑的著作が、ついに文庫化。図版多数収録!

はじめに
序 章 「花鳥画」研究への新たな光
 1 東西博物図譜史研究の現状と江戸時代「花鳥画」
 2 本書の構成
 第I部 自然と写生──博物学時代の到来
第1章 心に会得する花──近衛家熈「花木真写」と『槐記』
 1 日本自然誌事始
 2 『槐記』に語られる家熈
 3 「華道」の花・「本草」の花
第2章 宋紫石試論──南蘋流継承と離脱の様相
1 「猫に牡丹図」考察
2 宋紫石と実物写生
3 紫石の「写生真写法」
 第II部 秋田蘭画新考
第3章 小田野直武写生帖の意味
 1 甦る直武写生帖
 2 江戸時代「写生」の特質──模写と継承
 3 博物学大名たちのサロン
 4 西洋博物図譜への眼差し
 5 直武写生帖の意味
第4章 小田野直武筆「松に椿図」から佐竹曙山へ
 1 直武筆「松に椿図」──写生と本画
 2 椿図の系譜──椿愛好と絵画
 3 曙山と「椿に文鳥図」
 第III部 大名と狩野派
第5章 写生図の領分──江戸時代鳥類図譜と狩野派
 1 伝佐竹曙山筆「群禽写生図巻」
 2 博物学大名細川重賢
 3 狩野派の粉本継承としての写生図譜
第6章 鴨場の風景──狩野養信筆「鷹狩図屏風」と紀州徳川家旧蔵「赤坂御庭画帖」
 1 養信筆「鷹狩図屏風」再考
 2 「放鷹」と武家──制度と娯楽
 3 大名屋敷のサンクチュアリ
 第IV部 浮世絵花鳥版画の成立と展開
第7章 浮世絵花鳥版画の詩学──俳諧・狂歌文芸の興隆と博物学
 1 漆黒の彩──伊藤若冲の花鳥版画
 2 俳書と博物図譜──花鳥版画生成論I
 3 絵本の中の花と鳥──花鳥版画生成論II
 4 新しき花鳥の世界へ──歌川広重論
終章 海を渡った禽鳥帖──西欧と江戸時代博物図譜
 1 巴里と幻の禽鳥帖
 2 西洋博物図譜の模写
 3 西洋人の江戸博物図譜の発見
あとがき
初出一覧
参考文献
学術文庫版あとがき
掲載図版一覧


今橋 理子[イマハシ リコ]
著・文・その他

内容説明

花、草、虫、魚、鳥などを描く「博物図譜」は、長らく軽視されてきたジャンルである。しかし、色彩豊かで精密なその写実表現は見る者を惹きつけてやまない。本書は、江戸後期に大名や学者から庶民にまで及んだ動植物の生態への関心に注目し、博物図譜を科学と芸術の結節点として浮かび上がらせる。日本美術史研究の風景を一変させた記念碑的著作!

目次

「花鳥画」研究への新たな光
第1部 自然と写生―博物学時代の到来
第2部 秋田蘭画新考
第3部 大名と狩野派
第4部 浮世絵花鳥版画の成立と展開
海を渡った禽鳥帖―西欧と江戸時代博物図譜

著者等紹介

今橋理子[イマハシリコ]
1964年、東京都生まれ。学習院大学大学院人文科学研究科博士後期課程修了。博士(哲学)。現在、学習院女子大学教授。専門は、日本美術史・比較日本文化論。主な著書に、『江戸絵画と文学』(國華賞)、『秋田蘭画の近代』(和辻哲郎文化賞)ほか(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

HANA

52
江戸時代、草木や鳥を描く花鳥画があった。本書は花鳥画というジャンルと博物学の関係を紐解いた一冊。江戸初期の公家の花鳥画観から始まり、秋田蘭画、大名同士の博物学を通じての交流、江戸中期の狩野派と大名、俳句と花鳥画と、内容は幅広く通史のように捉える事も出来る。面白かったのはやはり若冲に関する部分であるが、それ以外にも細川重賢の描いた画を粉本とした佐竹曙山と秋田蘭画の関係とか、読んでいて知的興奮を覚える部分多し。江戸の博物学につていは荒俣宏で触れたくらいであるが、こういう風に説明されるとやはり面白いなあ。2017/05/19

skr-shower

1
図版も多く詳しく考察。文庫版でなければカラー図版だった?2021/05/10

レフラー

0
もちろん様々な背景から絵は描かれるわけだが、一枚の絵からここまでの広がりを提示できることにまず驚いた。人文書かくあるべし。江戸の文化の一端を垣間見ることができた。2020/01/19

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