出版社内容情報
日本型律令制成立への試行錯誤の百年を描く 日本が国家として成る奈良時代。大宝律令の制定、和同開珎の鋳造、遣唐使、平城宮遷都、東大寺大仏の建立……。木簡、発掘成果、文献史料で天平時代を読み直す。
渡辺 晃宏[ワタナベ アキヒロ]
著・文・その他
内容説明
日本の八世紀は、中国を範とした律令制を、日本の実態に適うように試行錯誤した、日本型律令国家の建設期である。この間の歴史は平坦ではなく、遷都が繰り返され、変や乱も相次いだ。木簡や文献史料、発掘の成果等により、天武天皇が飛鳥に都を造営してから、桓武天皇が平安京へと都を遷すまで、平城京の時代を中心に、古代国家百年の歩みをたどる。
目次
第1章 律令国家としての出発
第2章 平城京への道
第3章 長屋王から光明皇后へ
第4章 天平の日々
第5章 大仏開眼への道
第6章 平城京の終焉
著者等紹介
渡辺晃宏[ワタナベアキヒロ]
1960年生まれ。東京大学文学部卒。同大学院を経て、現在、奈良文化財研究所都城発掘調査部史料研究室長として、平城宮・京跡の発掘調査と木簡の整理・解読に従事。専門は日本古代史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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KAZOO
140
やはりこのような全集で日本の歴史を読み直すことが如何に面白いかということが実感できた本でした。高校時代に習っただけでは分からないようなことをこの著者は木簡を読み解いて詳しく説明されています。やはり実地に作業に携わった人でないとわからないようなことがよく理解でします。学問の研究方法について参考にもなります。2017/03/14
coolflat
15
天武・持統朝から文武~称徳朝(藤原不比等~長屋王~藤原四子~橘諸兄~藤原仲麻呂~道鏡)~桓武平安遷都まで。12頁。天武朝以降の律令国家建設の、壬申の乱以前のそれとの大きな違いは、律令国家の母体となった政権を支えてきた諸豪族の本拠地大和において、それを実行したことである。畿内に準じた土地とはいえ、近江への遷都には抵抗が大きかった。大海人皇子が飛鳥に戻った最大の理由はそこにある。その結果、大王の地位が高まり、大海人皇子の称号として天皇号が初めて採用され、豪族の影響を排除した国づくりを推進することが可能になった2020/06/01
かんがく
13
天武〜称徳の、いわゆる奈良時代。物凄く面白くて、古代史に完全にハマった。家系図による整理で、持統、宮子、元明、元正、光明子、孝謙など女性にも注目しており、関係性がわかりやすい。結局登場人物みんな親戚という、藤原氏VS他氏というわけでもないんだな。木簡、市、戸籍、都、税、貨幣などの考古学的分析も面白い。中国との関係もところどころに書かれ、かなり色々な角度から奈良時代を捉えられた。2019/03/22
sibasiba
10
そうそう中国は竹簡で日本では木簡が主流だったんだよな、と納得の題名に頷きながら読み進めると大好きな藤原不比等が登場。しかし彼の業績はしっかり描かれているがそれよりも長屋王から淳仁天皇の敗者の系譜的なものに目がいった。特に淡路廃帝とも呼ばれた淳仁天皇に感情移入してしまう。孝謙に相当な配慮していたのに道鏡について諫言しただけで最後には殺されてしまう。その後は道鏡を法王にして最後には天皇にもしようとは無茶苦茶だ。にしても矢鱈と遷都、寺院に大仏と天然痘が流行ったのによく財が尽きないな。2013/06/27
じゃくお
6
・奈良時代の特色は「政治権力が行ったり来たりすること」だと聞いたことがある。藤原氏や橘氏だけでなく、道鏡といった特異な人物も政権を握る。それほど政治状況は転変とするわけだが、天皇に依存した政治闘争であるため派手な印象はない。・唐に倣って律令制国家の形成を急ぐ日本だが、まだまだ唐には及ばない。大陸や半島と地続きであったなら、早々に侵略されていたことだろう。また、近隣諸国の情勢に対して板挟みとなっている点は現在にまで続いているのだろうか。2019/02/19