講談社文芸文庫
かげろうの日記遺文

  • ただいまウェブストアではご注文を受け付けておりません。
  • サイズ 文庫判/ページ数 269p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784062901642
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

出版社内容情報

生母への想いを『蜻蛉日記』の書き手・紫苑や下賤の女・冴野に投影。「言語表現の妖魔」といわれた犀星の女性への思慕を描いた名篇。生母への想いを『蜻蛉日記』の書き手・紫苑の上や下賤の女・冴野に投影。
「言語表現の妖魔」といわれた犀星の女性への思慕を描いた名篇。

※本書は『日本現代文学全集61 室生犀星集』(増補改訂版 1980年5月 講談社刊)を底本としました。

室生 犀星[ムロオ サイセイ]
著・文・その他

内容説明

原典『蜻蛉日記』ではあまり記されていない町の小路の女・冴野は、学も名もないながら、己のすべてを男に与え消え失せた美しい女であった。室生犀生は『日記』の書き手以上にこの女を愛し、犀星自身の消息を知らぬ生母の身の上に重ねて物語り、限りない女性思慕の小説とした。川端康成をして、“言語表現の妖魔”とまで言わしめた野間文芸賞受賞作。

著者等紹介

室生犀星[ムロウサイセイ]
1889・8・1~1962・3・26。詩人・小説家。石川県生まれ。本名・照道。不義の子として、生後すぐに貰い子に出される。12歳で金沢高等小学校を中退。地方裁判所の給仕をしながら俳句を学び詩作を始める。1910年、志を抱いて上京。以後、生活苦から帰郷と上京をくりかえすが、萩原朔太郎、山村暮鳥らと知り合い、16年詩誌「感情」を創刊。18年『愛の詩集』『抒情小曲集』を出版、詩壇に新風を起こす。19年自伝的小説『幼年時代』『性に眼覚める頃』を発表して一躍小説家としても認められる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

アキ・ラメーテ@家捨亭半為飯

42
まずはじめの一行「彼女の人眼を惹いているわけは、見るとすぐにひやりとさせる顔の冷い美しさだった。」に心を射抜かれた。真っ白な肌とつやつやとした長い黒髪がすぐ目の前に現れたかのような心地。2人の女を愛したい優しくしたいと思いながらも他の女(3人目)の元へ行かずにはいられない身勝手な男の心理、男によってもたらされる美しい姫たちの苦しみ嫉妬。ひとりその地点から抜け出したような小路の女・冴野はまるでこの世の者ではない女のようだった。読み終えてうっとりと物語世界に読み暮らして戻ってきた気分だった。2016/09/08

メタボン

33
☆☆☆☆★ ひたすらに美しい言葉でつづられる平安絵巻。町の小路の女、冴野。兼家にとっては都合の良い女なのであろうが、そのひたむきさに輝きを見た。紫苑の上の思い悩む姿もいとかなし。2017/10/17

翡翠

14
心を表す言葉が、こんなに沢山あることに驚愕。どうとも言えない、なんといえばよいのかわからない心の動きを、犀星は一粒残らず掬って鮮やかな色彩で描いてみせた。また、その言葉の美しさよ。日本語とは本来こんなに美しく、情緒に溢れた、儚いものだったのか。放たれた砂粒は、輝きだけを残して散ってゆく。まさに蜻蛉である。室生犀星って凄い。2022/01/31

14
★★★★★(昔、堀辰雄の「かげろうの日記」を読んだ事がある。犀星と堀辰雄の繋がりは深い。それは二人の小説等を通して見てもよく分かる。その犀星が堀辰雄の死後、「かげろうの日記遺文」を書いた事もある意味興味深い。犀星の町の小路の女へ対するの思い。そして道綱母こと紫苑の上の何とも言えない魅力と変化。全篇を通して、犀星独特の蜻蛉の日記となっており、最終章は原作とも堀さんとも違う味を出す。瞬時の美しさ、その美しさと儚さ、優しさと悲しさはまさに陽炎(蜻蛉)のようであり、犀星の実母と妻に捧げる一冊でもある。) 2012/11/13

n.k

11
不思議な言葉運び、浮遊感がある。一夫一妻制が当たり前今の日本人の感覚では、理解し難い男女関係。それぞれの感情と、それを伝えたいのか隠したいのかよくわからない言い訳?めいた言葉の数々が、細かく描かれていて興味深かった。冴野という人の、身の引き際の潔さは別にかっこいいとは思わなかったけれど。むしろ選ばれなくなった女たちの嫉妬、不器用な愛こそ美しく思える。2023/07/18

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/5118867
  • ご注意事項

最近チェックした商品