講談社文芸文庫
荊棘の冠

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  • サイズ 文庫判/ページ数 269p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784062901512
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

出版社内容情報

昭和9年に書かれた小説。美しき天才ピアニストの少女とその父に焦点をあて嫉妬や矛盾する人間の機微を描ききっている。初の文庫化。

昭和9年に書かれた小説。美しき天才ピアニストの少女とその父に焦点をあて嫉妬や矛盾する人間の機微を描ききっている。初の文庫化。

内容説明

才能溢れる美しきピアニストを娘にもった小説家の苦悩と周りの大人達との葛藤を鮮やかに提示。深く深く愛しながらも、「天才」という荊棘の冠を載せている娘に反感を抱く主人公を通じ、世の中には天才より大事があると里見は主張する。昭和九年の発表当時、小林秀雄をして著者が今までに試みなかった大改革と評された名作。

著者等紹介

里見〓[サトミトン]
1888・7・14~1983・1・21。小説家。横浜市生まれ。本名=山内英夫。学習院を経て、東京帝国大学文科英文科中退。有島武郎、生馬は実兄。母の実家を継いで山内姓を名乗る。生馬やその友人志賀直哉の強い影響をうけ、また泉鏡花の作品に傾倒する。1910年「白樺」の創刊に参加。16年最初の短篇集『善心悪心』で文名を確立。19年には吉井勇、久米正雄らと「人間」を創刊。常に独自の「まごころ哲学」を貫き通し、心理の綾や会話の妙にぬきんでた才能を示した。47年日本芸術院会員となり、59年文化勲章受章(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

きょちょ

20
主人公である小説家小幡宗吉は、癇癪持ちで何かあるとすぐ嫁さんや娘を殴るところは感心できないが、「あらすじ」にあるように、娘である天才ピアニストに特に嫉妬や反感を抱いているようには感じられない。身勝手なところも目立つが、常に率直に感情を表すのは、他者との摩擦も当然起こすけれど、彼には打算が無く、正直で好感ももてる。 周囲の長谷川や砂田夫妻の方が、偽善的で嫌だ。 うすらうすら感じていたある「事実」が、最後明らかになるが、それでも「情愛」が描かれる。 別れた嫁さんの「とめ」の方がはるかにしたたかだ。 ★★★ 2017/01/30

冬見

10
天才を持つピアニストの少女を取り巻く大人たち。実際に起こった事件が題材。主人公の小説家・小幡は思ったことを包まずそのまま口にする上に短気ですぐ手が出る、近くにいたらちょっと面倒くさい人物。けれども、天才少女を取り巻く人々のじっとりとした思惑を見ると、小幡の振る舞いは清々しさすらある。最初、五九子が父親に肩入れする理由がよく分からなかったが、彼女は父親の言葉に裏がないことや愛情をきちんと知っており、信用していたのかもしれないなと思った。解説にあった小林秀雄の面倒くさい感じに笑った。2018/08/30

amanon

3
これは今日的視点からは完全アウトだな。モラハラ、パワハラ、ストーカー、独親、サイコ的要素少なからずあり。当時の時点でも、この小説の主人公宗吉は、両手を挙げて歓迎された訳ではないだろうが、それでも、今日よりもずっと共感を持たれていたはず。その辺りの時代のギャップは如何ともし難い。ただ、そうした点に目を瞑れば、非常に魅力的な作品であることは確か。作者独特の登場人物の感情の機微や襞を生き生きと描き切る筆致は、本作でも存分に生かされているし、何だかんだ言っても、主人公宗吉は魅力的に映る。ラストの余韻も印象的。2023/05/14

mitou umo

1
娘として五九子に共感できる。2023/02/03

石川さん

1
娘恋しさに、娘と似た感じ(若いというだけ?)の愛人を作っておきながら、特に反省することもなく娘や本妻に威張り散らす、なかなかファンキーなお父さんです。それはそれとして、天才を囲む人達の、なんともいえない胡散臭さってありますよねぇ。2013/11/18

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