出版社内容情報
ベトナム戦争の見えない真実
一人の特派員 日野啓三は戦地で“何”を見たのか
初文庫化
のちの芥川賞作家・日野啓三がベトナム戦争の特派員時代を書いた戦争報道の日常。米国の通信社へ反発し独自の記事を送っていた裏でどのようなことが起こり、どう感じていたのか――筆者の戦争を見つめる鋭い眼差しと人間関係が精緻な文章から浮かび上がってくる。その後の作家人生に大きな影響を与えた作品。
日野啓三
時間とは過去から未来へと一方的に流れてゆくものではないのだ。――(略)――「何だろう。いやなことにならないといいがな」空港ターミナルに降りると、改札口はしまっている。事情があって出発を三十分延期しますと係員がいった。「おかしいぜ」私たちは空港の建物の二階にのぼって、空港とそれに隣り合う空軍基地の方をみた。乾ききった地面には陽炎が燃え、その中を先程の戦車が全速力で走りすぎてゆく。――<「本文」より>
※本書は、現代ジャーナリズム出版会『ベトナム報道 特派員の証言』(昭和41年11月刊)を底本としました。
日野 啓三[ヒノ ケイゾウ]
著・文・その他
内容説明
のちの芥川賞作家・日野啓三がベトナム戦争の特派員時代を書いた戦争報道の日常。米国の通信社へ反発し独自の記事を送っていた裏でどのようなことが起こり、どう感じていたのか―筆者の戦争を見つめる鋭い眼差しと人間関係が精緻な文章から浮かび上がってくる。その後の作家人生に大きな影響を与えた作品。
目次
事実と客観性
空白からの出発
見えない真実
動乱の報道
底流の認識
日本人特派員
“ベトコン”とは何か
従軍記者の条件
人民戦争の視点
増大する危機の行方
国際報道の転機
真実について
著者等紹介
日野啓三[ヒノケイゾウ]
1929・6・14~2002・10・14。小説家。東京生まれ。1952年、東大卒。小中学時代を植民地・朝鮮で過ごす。大学在学中から文芸評論を書き始め、新聞社入社後はソウル、ベトナム特派員を務める。66年、はじめての著書『ベトナム報道』、小説『向う側』を発表。主な作品に『此岸の家』(平林たい子文学賞)、『あの夕陽』(芥川賞)、『抱擁』(泉鏡花文学賞)、『砂丘が動くように』(谷崎潤一郎賞)、『夢の島』(芸術選奨文部大臣賞)、『断崖の年』(伊藤整文学賞)、『台風の眼』(野間文芸賞)、『光』(読売文学賞)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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