出版社内容情報
小林秀雄の文芸時評のみを集成した初の試み文芸時評家として文壇に登場した若き小林秀雄。そのデビュー作「アシルと亀の子」や「現代文学の不安」など昭和5年から昭和9年前半までの20余篇を収録。
内容説明
懸賞評論「様々なる意匠」二席入選の翌年(昭和五年)、「アシルと亀の子」で、文芸時評家として文壇に登場した小林秀雄。当時隆盛を極めたマルクス主義文学の観念性を衝き、また心理小説、私小説、行動主義等、あらゆる文学潮流にも与することなく、孤高を持し、本質的で独創的な論を展開。そこには個々の作品を論じつつも、批評という行為それ自体を問う、“近代批評”誕生のドラマがあった。
目次
昭和五年(アシルと亀の子;文学は絵空ごとか ほか)
昭和六年(マルクスの悟達;文芸時評 ほか)
昭和七年(梶井基次郎と嘉村礒多;現代文学の不安)
昭和八年(故郷を失った文学;文芸月評 ほか)
昭和九年(文学界の混乱;新年号創作読後感 ほか)
著者等紹介
小林秀雄[コバヤシヒデオ]
1902・4・11~1983・3・1。評論家。東京生まれ。東京帝大卒。29年、「改造」の懸賞評論で「様々なる意匠」が二席に入選。翌年から「アシルと亀の子」などの文芸時評を始め、プロレタリア文学の観念性を衝き、批評家としての地位を確立。以降、昭和文学のひとつの中心をなす(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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さとちゃん
5
小林秀雄氏のお名前は知っているものの、読んだことはなかった(という作家さんが、私には多すぎる気がしている)。古書店で出会い、良い機会だからと読んでみたが、私の力量では「読むだけで精一杯」。紡ぎ出される理論と言葉は、読んでいる最中はわかるような気がしていたのに、読み終わってみると「私、本当にわかったの?」と心配に。印象的だった言葉は「一体読み易い名文などは意味をなさぬ言葉である。名文に難解は附きものだ。」そうなんですね。難しく感じるのは私だけではないのだと、何となく安心。2024/03/06
かがみん
2
初小林秀雄。文章が軽妙で面白い。時代的に批評している作品は知らないものばかりで、それらに関する部分は読み飛ばし。横光利一『機械』は事前に読んでいたので、その点の批評は興味深く読めた。2013/01/21
刻青
0
中原中也にハマったとき、泰子を奪ったのはお前かぁ!ってな感じでついでに読み始めたのですが‥ いやいや、こっちにもすっかりハマってしまいました。話すことはいろいろですが、とにかく小林さんがそれに自分の知と感覚の全てでぶつかってる、ということがわかります。そこからまた美しい文章の生まれること!知識よりもそれを見る眼、魂のほうが大切というのがよくわかりますねー。自分の魂に合うか合わないか。それはなぜなのか。作品に、自分の魂に何があって何がないのか。繰り返すと自分自身が見えてくる。かな? 小林さん、合ってますか?2021/06/06
YY
0
書いてあることは案外シンプルで、作品から人(?)を見る、という観点と、その作品に自分の真摯な関心があらわれているか、技術的にそれができているか、というあたりを軸にした分析のように思えた。そんで、文学をやるにもそういう諸点を明らかにするために理論というか文学そのものへの疑いが必要だけれど、そういう苦労をしましょうと。2014/12/25