内容説明
戦後、虚脱と混乱の世相を体現するかのような烈しい生を、「可能性の文学」に殉じて壮絶な死で終わらせた織田作之助。三高での出会い、関西から東京へと共にした街歩きの青春、文学への熱情とデカダンスに駆られ自滅への道をひた走る流行作家の貌…。四篇の実名小説は、著者が親友に捧げた鎮魂の書であり、その文学の火種を九五歳でなくなるまで燃やし続けた“最後の無頼派”青山光二自身の青春の書である。
著者等紹介
青山光二[アオヤマコウジ]
1913・2・23~2008・10・29。小説家。兵庫県生まれ。第三高等学校を経て東京帝国大学美学美術史学科卒業。三高時代、織田作之助、富士正晴、野間宏らと知る。1935年、同人誌「海風」創刊。織田、太宰治等無頼派作家と親交を結ぶ。47年、織田が東京で客死する前後も間近に付き添い、55年、『青春の賭け 小説織田作之助』刊行。戦後はやくざやアウトローの世界に取材した作品を多く発表、「修羅の人」(小説新潮賞)や、鶴見騒擾事件を描いた「闘いの構図」(平林たい子文学賞)等がある。2003年、90歳の現役最高齢作家として私小説の名品「吾妹子哀し」で川端康成文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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太郎
2
ずっとずっと読みたかった本ようやく読破!!! 人なつッこいという表現がたくさん使われていたのが印象に残りました。あとは一枝さんとの恋愛について、うっすらとしか知ることができずモヤモヤしていたので細かく知ることができてとても嬉しい。2019/05/06
rbyawa
2
h094、同時代の文芸関係の本を読み慣れた友人がわりと定期的に「出てくる人の名前がわからん!」と訴えてくるものの、だから集団そのものが知られた文学の世界とは違うんだよとしか言い様がない。ただ、この作品の彼は長生きしてたらそれこそその親友ごと世に知られる存在になっていたのかもなぁ、と思わないでもない。中央公論との仕事だけがないって…まあかなりの売れっ子だよね普通に。ただ世に認められたと言うにはあと少しの壁のようなものがあり菊池寛が現れた時点が多分その架け橋になるはずだったんだろう、その直後に病死か…切ない。2018/01/23
廊下とんび
1
いつの時代にも青春がある。時代背景についてはあまり言及されていないが戦時中にもこんなお盛んな恋愛していたということがこれまた凄い2015/03/08
AR読書記録
1
「文学は浪費だよ。金も人生も綺麗さっぱり、浪費し尽くすところに文学があるんだよ」と嘯き、そのとおりに命を浪費していく織田作之助、「あいつの行く途はひとすじだ。嘘もゴマカシもない。あいつはホンモノなんだ。だからこそ、あいつは死ぬかも知れない。がそれがいったい何だというのだ!」と、その生きざまを見つめ続けた青山光二。ある時代における、ある青春の物語。実名小説なところが戦後文壇の様子を見せてくれるところもあって面白いな。菊池寛の大物ぶり。年譜に見える太宰のエピソードも見逃してはならんな。2014/04/05
ますん
1
「旅行者」のラストは胸がしめつけられます。織田作に興味がある方は是非。