講談社現代新書<br> 日本海軍と政治

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講談社現代新書
日本海軍と政治

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  • サイズ 新書判/ページ数 218p/高さ 18cm
  • 商品コード 9784062882996
  • NDC分類 312.1
  • Cコード C0221

出版社内容情報

海軍の太平洋戦争への責任は陸軍に比して軽かったのか? 「不作為の罪」をキーワードに、戦前期日本海軍の「政治責任」を検証する。なぜ日本は無謀な太平洋戦争に突入してしまったのか? その大きな原因の一つに軍部の暴走を上げる人は多いでしょう。しかしこの問題では、陸軍に比して海軍が批判されることは少ないように思われます。では、本当に海軍の責任は軽かったのでしょうか? 著者の結論は、確かに海軍は陸軍に比べると直接、政治に容喙することは少なかった。しかしそのことをもって戦争突入の責任がなかったとは言えない、というものです。「責任」は、なすべきことがあったのにそれをやらなかった場合にも問われるべきではないでしょうか。いわゆる「不作為の罪」です。海軍の場合、この不作為の面での責任が非常に大きいのです。海軍には、常に陸軍の後塵を拝しているという意識がありました。そのため陸軍に対する対抗意識は非常に強く、予算獲得に際しては常に陸軍と張り合うような行動を取ってきました。戦前日本は、陸の仮想的であるソ連には陸軍が、海の仮想的であるアメリカには海軍が主になって対抗することになっていました。ということは、太平洋戦争が海軍を主とした戦争になることは明らかでした。しかし海軍は、戦争突入の直前まで火中の栗を拾うことをいやがりました。山本五十六だけでなく、対米戦争になれば日本海軍が負けることは上層部にはわかっていました。しかし、海軍には、「負けるので戦争はできません」とは口が裂けても言えませんでした。これまでずっと、対米戦のためと称して陸軍に対抗して予算をぶんどってきたからです。また山本にしても、仮に負けるにせよ、どのように負ければいいのか、終戦に至るプロセスのイメージは全く持っていませんでした。自分の「部署」のメンツを保つために戦争に突入したとさえも言えるのです。現代のお役所が省益の確保に汲汲として国民のことは全く視野に入っていないのと同じ構造だといえるでしょう。本書は、従来、陸軍に比して語られることの少なかった「海軍と政治」の問題を、「不作為の罪」をキーワードにすることによって明らかにするものです。そして、明治憲法下においては政府・議会と並ぶ国家の主柱であったにもかかわらず、その責任を十分に果たすことのできなかった海軍の「政治責任」が、はじめて正面から問われることになるでしょう。

序章 海軍と政治
第一章 創建時の海軍
第二章 政党と海軍
第三章 軍部の政治台頭と海軍
第四章 アジア・太平洋戦争と海軍
終章 近代日本における海軍の政治的役割


手嶋 泰伸[テシマ ヤスノブ]
著・文・その他

内容説明

海軍は陸軍の有力な対抗勢力として期待されながらも、陸軍を十分に抑止することはせず(あるいは、できず)に、軍部の政治的進出という事態を招いた一因となっていた。また、アメリカとの戦争の決定過程において、海軍が決定の責任を回避しようとしていたことは、よく知られている。それらは海軍が政治に対して消極的な姿勢をとっていたために生じたことだが、その一方で、海軍が積極的に政治に関与しようとした事例も存在する。海軍は「善玉」だったのか?日本海軍の「政治責任」を検証する。

目次

序章 海軍と政治
第1章 創建時の海軍
第2章 政党と海軍
第3章 軍部の政治的台頭と海軍
第4章 アジア・太平洋戦争と海軍
終章 近代日本における海軍の政治的役割

著者等紹介

手嶋泰伸[テシマヤスノブ]
1983年宮城県生まれ。東北大学文学部卒業、同大学大学院文学研究科博士課程後期修了。日本学術振興会特別研究員・東北学院大学非常勤講師を経て、福井工業高等専門学校一般科目教室助教。博士(文学)。専門は日本近代史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

樋口佳之

27
海軍はアメリカとの戦争を計画し、準備していたにもかかわらず、アメリカが当時は一大産油国だったために、戦争に必要な石油をアメリカからの輸入に頼らざるを得ないという矛盾を抱えていた/やっぱりここに尽きちゃう2019/03/07

skunk_c

24
再読。笠原十九司の「大山事件海軍陰謀説」のあたりについて再確認してみたが、本書では軍令部は当初から中国南部(海軍の所轄地域)への陸軍派遣を主張、これに対し海相の米内光政は当初政府と同様不拡大方針だったが、出雲への中国軍空爆を受けた後強硬な南部は兵主張に変わったとする。はたして軍令部の考えを実行するために大山事件が策謀されたのかは本書では不明。可能性はなきにしもあらずと言ったところか。ただ、本書のひとつの立場である、海軍の政治との関わりは予算獲得が第一との視点は、「大山事件陰謀説」につながると言える。2019/01/19

MUNEKAZ

15
「軍人は政治に容喙せず」というと立派に聞こえるが、その内実は自らの専門分野に閉じこもり、責任回避に努めているだけなのではという見方が印象的。海軍の主観では軍事と政治を分け、理性的に振舞っているつもりでも、実際には「何もしない」ことで事態を悪化させている状況は、時に喜劇的に感じるほど。軍隊といえども一つの官僚組織であり、その第一は省益と予算獲得にあるというのが如実にわかる。対米戦という自らが主役の戦争でも、大局的な見地ではなく、官僚的な思考で動いている様子(特に米内光政に手厳しい)には辛いものがある。2021/07/02

ロッキーのパパ

14
著者の言いたいことはよく理解できた。ただ、その一点にこだわりすぎている気がして、読んでいて広がりを感じなかったことが残念だ。旧日本海軍の通史として読むにはちょうどいいかも。2015/03/17

中年サラリーマン

14
人間自体が戦力である陸軍は徴兵が重要だ。そのため原資となる国民世論の動向は彼らにとって重要でありそれが陸軍の政治力を強化した一因ともなる。海軍は違う。戦艦を動かさなければならない。それには高度な専門知識が必要でその習得にも時間がかかり、それが機能別で合理的な集団組織を生み出す要因に。さらには戦艦には金がかかる。海軍にとっては世論の動向よりも予算の分配の方が気がかかる。このように見える景色の違う陸海軍が日本をどうしようとし、どう戦争をはじめ、またそれらを決定した両者の思考形式の違いとは何かを論じる良書。2015/03/15

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