講談社現代新書
温泉をよむ

  • ただいまウェブストアではご注文を受け付けておりません。
  • サイズ 新書判/ページ数 274p/高さ 18cm
  • 商品コード 9784062880886
  • NDC分類 383.6
  • Cコード C0221

出版社内容情報

日本人にとって温泉とはなにか。それは癒しと憩いの場であり、明日への活力を養う場であると同時に、非日常的な時空間に身を置き、文字通りの「再生」を願う場所でもありました。
古代人は熱い湯が大地から噴き出すことに恐れおののき、これに神格を認めました。また、医療の発達していない時代にあっては、薬石効なく医者から匙を投げられたものたちが最後の望みを託して杖をひく場でもありました。近世に至れば歓楽の場ともなり、また科学的に温泉を理解しようとする動きも出てきます。
近代になって温泉を「観光地」「保養地」として理解しようとする人びとは、それまでの信仰や民俗が雑多に、重層的に存在する温泉地のありかたを「旧来の陋習」として排斥していきます。その一方で、インテリとよばれる若者たちによって温泉は「青春の煩悶」と結びついた特権的な場所として表象され、やがてそれは文学名所として観光的に「消費」されていくことになります。
本書は温泉が日本文化においていかに重要な存在であるかを多角的に明らかにしていきます。

第一章 湯の底の記憶──温泉の歴史学
  1 道後はなぜ「日本最古」の温泉なのか
  2 中世の熱海と有馬
  3 幻の温泉、さまよえる温泉
  4 入浴法さまざま

 第二章 再生と変身──温泉の宗教学
  1 病気平癒への深い祈り
  2 神の湯
  3 薬師と地蔵

 第三章 「湯治」の実態をさぐる──温泉の医史学
  1 温泉番付表の意味
  2 江戸時代の「城崎にて」
  3 有馬温泉と『温泉論』
  4 湯治場と保養地のはざま

 第四章 効きめはいったいどのくらい?──温泉の医学
  1 保険は適用外
  2 療養泉と適応疾患
  3 大湯リハビリ温泉病院の試み

 第五章 来た、見た、浸かった──温泉の博物学
  1 温泉、奇石を生ず
  2 噴き出る不思議
  3 湯へのまなざし

 第六章 湯の力、人びとの暮らし──温泉の民俗学
  1 祭りの場
  2 生活のなかの温泉
  3 みやげと伝統産業

 第七章 漱石、川端、賢治──温泉の文学
  1 坊ちゃんの赤手拭い
  2 『伊豆の踊子』と『雪国』のあいだ
  3 花巻温泉の三つの花壇

目次

第1章 湯の底の記憶―温泉の歴史学
第2章 再生と変身―温泉の宗教学
第3章 「湯治」の実態をさぐる―温泉の医史学
第4章 効きめはいったいどのくらい?―温泉の医学
第5章 来た、見た、浸かった―温泉の博物学
第6章 湯の力、人びとの暮らし―温泉の民俗学
第7章 漱石、川端、賢治―温泉の文学

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

たくのみ

10
こだわりの集団、温泉文化研究会による「温泉学」入門というべき本。 温泉のどこにこだわるのか。それは歴史と伝統、源泉の位置、故事名刹の碑、すべてを捉えなくてはいけない。効能や施設の立派さ、宣伝に目を囚われることなかれ。本質を見なくてはいけない。温泉文化論が展開されていく。でも、ここまで追求すると、ゆっくり温泉を楽しめない気がするんだけど。2016/07/12

そうたそ

9
★★★☆☆ 温泉を歴史、宗教、医学、文学等々、様々なアプローチから解説する一冊。温泉は好きだけど、さすがにそこまでは…と尻込みしてしまうくらいにマニアックな解説がなされている内容だが、それだけにしっかり読み込んだ後の満足度は高いかも。章ごとに分かれているので、とりあえず興味のある部分だけ読んでもいいかもしれない。これでもかという程に温泉を堪能できる内容なので、温泉好きなら温泉を学ぶためにも一度手に取ってみたい一冊。2024/10/11

ろべると

4
温泉を学術的に研究しているメンバーがまとめた本なので、内容は硬い。温泉文化について歴史的、民俗学的など多方面から解説している。あとがきでは昨今の温泉ブームを嘆いてもいる(2011年刊)。私は鄙びた温泉街の風情や共同浴場のローカルな雰囲気が好きだし、温泉は何よりも湯の質に拠ると思っているので、参考にはなる。でもあんまり真面目に温泉に取り組むのも肩が凝ることも事実だ。2022/03/25

epitaph3

2
さりげなく入浴の注意が記載されてある。覚えておこう。あとは小難しいや( ´∀`)2013/12/31

masaYoshizuka

2
日本温泉文化研究会は歴史・宗教・医療・博物学・民俗学などの研究者達の団体。かなり学術的に温泉を研究している。これまでは一般書を出したことはなかったけど、文脈から察するに、エセ温泉研究家による発言や出版が我慢ならなくて今回の出版に至った、ということらしい。それって、多分あの人や、あの人のことだと思います。 内容は硬派。勉強のつもりで読んだほうがいい。 温泉と癩病患者の関わりの歴史など、あまり表に出てこない話は印象に残る。 「温泉で癒されたいわ~~~」というレベルの人には薦めません。2011/12/09

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/1987332
  • ご注意事項

最近チェックした商品