講談社文庫<br> トレイシー―日本兵捕虜秘密尋問所

電子版価格
¥817
  • 電子版あり

講談社文庫
トレイシー―日本兵捕虜秘密尋問所

  • ただいまウェブストアではご注文を受け付けておりません。
  • サイズ 文庫判/ページ数 460p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784062773102
  • NDC分類 210.75
  • Cコード C0195

出版社内容情報

太平洋戦争で捕虜となった日本兵から、アメリカはいかなる手段でどんな情報を入手していたのか。講談社ノンフィクション賞受賞作。アメリカにとって捕虜=「情報」だった
日本兵は、なぜ尋問官にあらゆる情報をしゃべったのか

得体の知れない敵国、日本を丸裸にするため、アメリカはすさまじい執念とエネルギーを費やし極秘に捕虜尋問センターを準備した。暗号名はトレイシー。日本人の国民性、心理、戦術、思想、都市の詳細などについて捕虜たちが提供した情報が、やがて日本の命運に大きくかかわってくる。講談社ノンフィクション賞受賞作。

太平洋戦争期の日本兵は、戦陣訓の「生きて虜囚の辱(はずかしめ)を受けず」の一句に代表されるような考え方で教育される一方、捕虜に関するジュネーブ条約の内容についての教育を受けておらず、捕虜となった際の作法や対処法が身体化されていなかった。
――加藤陽子(東京大学教授)<解説より>

プロローグ 丸裸にされた日本列島
 第一節 爆撃目標としての「皇居」
 第二節 暗号名「トレイシー」
 第三節 アメリカは捕虜から何を聞きだしたか

第一章 秘密捕虜尋問センターの罠
 第一節 ロンドン
 第二節 ワシントン
 第三節 私書箱651、トレイシー、カリフォルニア
 第四節 海軍日本語学校
 第五節 ある尋問官の回想
 第六節 エンジェル島

第二章 空母「飛龍」と潜水艦呂号第61の男たち
 第一節 捕虜第一陣
 第二節 ミッドウェーの敗者たち
 第三節 潜水艦乗組員の悲劇
 第四節 太平洋艦隊司令長官ニミッツ大将の訪問
 第五節 真珠湾の零戦操縦士

第三章 A─airシリーズと爆撃目標情報
 第一節 サイパン陥落
 第二節 合同攻撃目標グループ(JTG)


第四章 陸軍省日本資料会議
 第一節 集結した「日本の専門家」たち
 第二節 日系二世の語学兵に下された密命

第五章 ワシントンの日本人捕虜第一号
 第一節 知りすぎた男、海軍大佐沖野亦男
 第二節 「フォート・ハント」での尋問


第六章 ブロッサム
 第一節 サイパン・ブラックラジオ
 第二節 グリーンズ・エリア


第七章 硫黄島の秘密
 第一節 最激戦地からの生還者
 第二節 明かされた最高機密


第八章 盗聴された大島浩大使
 第一節 ベルリンからワシントンへ
 第二節 緊迫した国際情勢のもとで
 第三節 収容所を揺るがした「原爆投下」


第九章 それからの太平洋戦争
 第一節 厚生省援護局からの照会
 第二節 牧野一則上等兵曹はなぜ射殺されたか


エピローグ 尋問官長ウッダードと靖国神社
 第一節 過去を消した情報将校
 第二節 靖国神社の存続は誰が決めたのか

あとがき
文庫版あとがき
主要参考文献・資料
取材・資料協力者


中田 整一[ナカタ セイイチ]
著・文・その他

内容説明

得体の知れない敵国、日本を丸裸にするため、アメリカはすさまじい執念とエネルギーを費やし極秘に捕虜尋問センターを準備した。暗号名はトレイシー。日本人の国民性、心理、戦術、思想、都市の詳細などについて捕虜たちが提供した情報が、やがて日本の命運に大きくかかわってくる。講談社ノンフィクション賞受賞作。

目次

丸裸にされた日本列島
秘密捕虜尋問センターの罠
空母「飛龍」と潜水鑑呂号第61の男たち
A‐airシリーズと爆撃目標情報
陸軍省日本資料会議
ワシントンの日本人捕虜第一号
ブロッサム
硫黄島の秘密
盗聴された大島浩大使
それからの太平洋戦争
尋問官長ウッダードと靖国神社

著者等紹介

中田整一[ナカタセイイチ]
1941年熊本県生まれ。’66年九州大学法学部卒業後、NHK入局。スペシャル番組部長。その後、大正大学教授を経て現在、執筆に専念。『満州国皇帝の秘録―ラストエンペラーと「厳秘会見録」の謎』(幻戯書房)で、毎日出版文化賞、吉田茂賞受賞。『トレイシー―日本兵捕虜秘密尋問所』(講談社)で、講談社ノンフィクション賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

James Hayashi

36
元NHKスペシャル番組部長、元大正大教授、10年著。講談社ノンフィクション賞受賞作。日本軍は情報より作戦を重視していたが、米軍は捕虜から心理、戦術、思想や軍需施設などを吸い上げ、情報戦の勝利に大きく貢献。「生きて虜囚の辱しめを受けず」を金言としていた日本人であるが捕虜となるとすぐに情報の開示をしてしまうのは何なのだろう。物資、戦略だけでなく心理的にも一枚も二枚も上手だった米軍。その秘密情報を戦後開示してしまう事にも驚かされた。2019/08/31

donboo

15
「トレイシー」日本兵捕虜秘密捕虜尋問所の暗号名。大東亜戦争時に特に重要情報を知っていると思われる捕虜が収監された。皇居、零戦製造工場など詳細なスケッチに驚かされる。尋問官の守秘義務を守り、捕虜が母国で不利益を蒙ることが無いよう人道配慮が多くの情報を聞き出せた要因だろう。トレイシーの存在が公になったのは戦後60年を過ぎた頃。多くの情報を入手し、取捨選択し相手を知り戦略を練る。アメリカは何枚も上手であったということ。今尚、多くの記録がワシントンの公文書館に保存されている。2017/07/13

リキヨシオ

15
日本は軍事力などの「戦術」以上に、情報力を駆使した「戦略」を軽視した。アメリカは尋問した捕虜達から有益な情報を吸出して、日本の内部を丸裸にした。日本とアメリカの差はすさまじいものだったと思う。今まで尋問と拷問と同じイメージを持っていたが本質は異なり、尋問において盗聴や捕虜同士のコミュニケーションなど人間心理を巧みに操る。2016/03/20

glaciers courtesy

6
「失敗の本質」を読んだ時にも思ったけど、太平洋戦争は勝ちようの無い絶望的な戦争だったことを痛感する。国としての基礎体力に大差があり、その上に戦略で劣り、この「トレーシー」で紹介される戦術の部分でも完敗している。アメリカのプラグマティズムというのは現代を勝ち抜く最強の方法論だということなのだろう。読み物として面白いかというと僕はそうは感じなかった。個別のエピソードは消化不良だ。しかし今も日本は情報公開という面でアメリカに大きく後れを取っているという著者の指摘には同意するし、この本を読む価値は十分あると思う。2015/07/14

遊々亭おさる

6
太平洋戦争中にアメリカで極秘に進められた日本人捕虜に対する尋問計画、暗号命はトレイシー。彼らは表面的にはジュネーブ条約に則り、あくまで紳士的な態度を装い、あらゆる手管を駆使しながら日本国と日本人を丸裸にしていき、戦争の完全勝利に貢献していく。その任務は血は流れぬが机上での熾烈な戦闘だったのだろう。日本の完全敗北の真の要因は、実は圧倒的な軍事力の差などではなく、情報に対する意識の差ではなかったのか。そして今も日本は、情報という戦争に負け続けている。2013/10/13

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/5148523
  • ご注意事項

最近チェックした商品