出版社内容情報
親子、夫婦、兄妹……人と人の絆、それぞれの胸に去来する思い。
小説家・伊集院静の原点
七夕の笹を求めて分け入った山中で窮地に陥った父を助けようと必死に走る少年の思い(「皐月」)、店が開店した日に事故で亡くなった母親の在りし日が鮨職人の心に鮮やかに甦る瞬間(「三年坂」)……。めぐる歳月と人生の哀切を、抒情あふれる端正な文章で描き出した、著者の原点とも言うべき珠玉の作品集。
●三年坂
●皐月
●チヌの月
●水澄
●春のうららの
※本書は、1992年8月に講談社文庫より刊行された『三年坂』を改訂し文字を大きくしたものです。
伊集院 静[イジュウイン シズカ]
著・文・その他
内容説明
七夕の笹を求めて分け入った山中で窮地に陥った父を助けようと必死に走る少年の思い(「皐月」)、店が開店した日に事故で亡くなった母親の在りし日が鮨職人の心に鮮やかに甦る瞬間(「三年坂」)…。めぐる歳月と人生の哀切を、抒情あふれる端正な文章で描き出した、著者の原点とも言うべき珠玉の作品集。
著者等紹介
伊集院静[イジュウインシズカ]
1950年山口県生まれ。’81年短編小説「皐月」でデビュー。’91年『乳房』で第12回吉川英治文学新人賞、’92年『受け月』で第107回直木賞、’94年『機関車先生』で第7回柴田錬三郎賞、2002年『ごろごろ』で第36回吉川英治文学賞をそれぞれ受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
James Hayashi
26
あまり印象に残らない短編集であるが、強いて言えば「水澄(ミズスマシ)」の高校球児が良かった。2019/01/31
きょちょ
22
人間が普通に生きていくことは、結構「普通」ではなく、それぞれいろいろと感じるし、いろいろと考え、それなりに一所懸命生きているもんだ。 そういうことを描く作品は結構好きで、この中では「三年坂」が特に良い。 主人公が母のそういったところを感じながらも、母が死んだあとそれが明確になり、でもそれを普通に認めている所が良い、 「水澄」も良いが、この作品含め4作は、「まだ熟さない果実」といったところか。 作者を認めているから、ちょっと辛口かな。 ★★★2016/07/31
雪丸 風人
6
思い出に重きを置いた作品が多めの作品集。もの凄かったのは、父の危機に助けを求め疾走する少年を描いた『皐月』の緊迫感ですね。懐かしいぬくもりとともに、思いもよらぬ母の一面を知る『三年坂』には、しんみりとした味わいがありました。不器用な男の生き様という面では、不祥事で自滅する元エリート球児を描いた『水澄』にも惹き込まれました。特にいいのは、飛び入り参加の草野球で苦闘するシーンですね。『春のうららの』にあるような、すこぶる変だけど思い出深い旅行というのも経験してみたくなります。(対象年齢は15歳以上かな?)2020/10/09
黒頭巾ちゃん
3
「水澄」 はよかったです 高校球児だったサラリーマンが、職を転々とし人生を失敗していると感じてます それは、今まであえてピンチでも突き進んでしまったから ある日、草野球で助っ人に入りそこで気づきます 「ピンチを避けて、安全策もいいのではないか」 それで前に進めそうな内容です 2012/03/22
まいど
3
出版社の新人社員に「あの人はもう死んだ作家だ」のセリフに奮起してここ2~3年元気ですね。 やればできる人なんです。 伊集院静の最初の短編小説集です。 勝手な仲違いを二十数年続けたけれどやっと最近許せて読めるようになりました。 直木賞作家ですが芥川賞取ってもいい作品ばかり。 時代もあり出てくる人々は戦争で打ちのめされた人ばかりですが前向きさは明治人と同じものを感じる。 最近の芥川賞は生きることの辛さに負けた話ばかりなのは時代なのかもしれませんが生命力の強さを感じる昭和の人たちを書けるこの時代は2012/02/26