出版社内容情報
島田 荘司[シマダ ソウジ]
著・文・その他
内容説明
ボスニア・ヘルツェゴヴィナで、酸鼻を極める切り裂き事件が起きた。心臓以外のすべての臓器が取り出され、電球や飯盒の蓋などが詰め込まれていたのだ。殺害の容疑者にはしかし、絶対のアリバイがあった。RPG世界の闇とこの事件が交差する謎に、天才・御手洗が挑む。中編「クロアチア人の手」も掲載。
著者等紹介
島田荘司[シマダソウジ]
1948年広島県生まれ。武蔵野美術大学卒。1981年『占星術殺人事件』で衝撃のデビューを飾る。「島田荘司選 ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」や「講談社『ベテラン新人』発掘プロジェクト」の選考委員を務めるなど、新しい才能を発見し世に送り出すことにも力を入れている。現在は、ロスアンジェルス在住(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Tetchy
57
いやあ本当に島田はとことん奇妙で理解不能な謎をどんどん放り込む。全然衰えないその奇想力に感服する。彼の謎のモチーフにはデビュー作以来、生命のないものが血肉を経て奇跡を起こすという幻想的な謎が多い。人形の持つミステリアスな雰囲気が好みなのか。ただ本書はそんなギミックと驚愕の真相のみを評価するには十分ではない。彼の主張とはやはり旧ユーゴで起きた民族紛争が落とした暗く深い翳、セルビア人、クロアチア人の大きく深い暗黒のような溝にある。島田の世界残酷紀行は今なお続いている。しかしピラニアを詠んだ傑作俳句って一体…。2011/08/17
青葉麒麟
42
表紙のイラストにビビったけど、内容を読んで納得。ちょい強引だなぁと思ったけれど、やっぱ私にとって《神》みたいな存在の作家。2011/10/30
やっちゃん
35
神話めいた1話目と石岡くんが頑張る2話目、潔は安楽椅子。どちらも島田荘司らしい作品で好き。いつもよりコンパクトにまとまってて良かったと思う。仮想通貨ネタとはだいぶ現在に近づいてきたなと。どこまでが史実か混乱するので後書きは助かった。2023/05/26
coco夏ko10角
35
御手洗潔シリーズ。『リベルタスの寓話』と『クロアチア人の手』収録。『手』のトリックはこれは・・・。でもミステリーうんぬんより民族や戦争のことについて考えさせられるし読後ずーんとしてしまった。2018/02/03
RIN
33
『さよなら妖精』でユーゴスラビアの紛争にやりきれない想いをしたのに、当該作がむしろ牧歌的に思えてしまえるほど本作で描かれるクロアチア人vsセルビア人vsムスリムの三つ巴の紛争の凄惨は平和ボケしている我々日本人には言葉を失う。紛争が終結しても人の心の傷跡は消えず戦争は続くのだ。他の国々も民族や宗教やイデオロギーが絡んだ戦争はあったものの、内戦の恐ろしさは次元の異なるものだと思い知らされる。シリーズミステリではあるのだが、御手洗潔が間接的関与、舞台や登場人物が外国のものの方が読み応えがあるというのは^^;。2016/02/12