出版社内容情報
阿部 夏丸[アベ ナツマル]
著・文・その他
内容説明
僕にザリガニの味を教えたのは、六年生の春に転校してきたこうすけだった。クラスの誰ともしゃべらないこうすけと僕の間には、二人だけの秘密があった。ひと夏を共に過ごし、成長する少年たちの姿をみずみずしく描く表題作ほか二編を収録。坪田譲治文学賞、椋鳩十児童文学賞をダブル受賞したデビュー作。
著者等紹介
阿部夏丸[アベナツマル]
1960年愛知県豊田市生まれ。95年に書下ろしの本作『泣けない魚たち』でデビューし、第11回坪田譲治文学賞、第6回椋鳩十児童文学賞をダブル受賞。『オタマジャクシのうんどうかい』で第14回ひろすけ童話賞を受賞する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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ひのきの本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
はる
54
郷愁を誘う少年たちと川の物語。夕立の匂い、草むらを吹き抜ける風、蝉しぐれ。濃密な夏の雰囲気の中、生き生きと躍動する少年たちの姿にワクワク。川遊び、ザリガニ釣り、秘密基地…。経験したことは無いけれど何だか凄く懐かしい。かけがえのない日々を過ごす少年たちの息遣いが伝わってきます。大人達との関わりも良かった。2017/02/16
Caroline
28
読み終えてすぐ、大きな深呼吸をしました。瑞々しく書かれた自然の中で飛び回る昭和の子供たち。その姿に心が洗われただけでなく、純粋な子供が体験する切ない出来事はズシリと心に残りました。タイトルと表紙の写真も読後、染みました。「ひろすけ童話賞」を受賞された作家さんとのこと、納得です。2017/02/16
Willie the Wildcat
28
自然との共生、友情。一方、自然破壊や別れ、そして大戦の遺した傷跡。”魚”の齎す繋がりと現実。故に、泣けないし、泣かないんだよなぁと思う・・・。印象深いのが「サツキマス」。こうすけの想いにさとるの涙。友情を育む過程の描写が丁寧なのも、想いの深さを感じさせる。再会時の2人の喜びが頭に浮かぶ!蛇足だが、”ザリガニの共食い”はしたことあるが、さすがに”カエルの皮”は・・・。(汗)2013/10/30
まる子
25
表題作を含め3編の物語。『泣けない魚たち』は坪田譲治文学賞、椋鳩十児童文学賞のダブル受賞したデビュー作とのこと。転校してきたこうすけは周りとあまり馴染まず、河童の噂が。さとるはそんなこうすけとあるきっかけで仲良くなる。ザリガニを釣って食べた。夜に忍びこんだ金魚屋で魚を釣った。夏休みの自由研究に自然の物を使った。幻のサツキマスを一緒にと約束したはずだった。そしてさとるは河童に助けられたー。涙腺を持たないとされる魚。河童淵の魚はきっと涙を。ひと夏の成長。単行本は1995年と古い作品。中3学力C出題作。2023/11/12
harupon
18
阿部夏丸さん、初読みの作家さんです。児童書を読むのは好きです。川遊びをする子どもたちの物語り3篇。川や池の一部をせきとめて中の水を全部くみ出して魚を捕る「かいぼり」。河童森の奥に見晴らし台や秘密の基地を作って遊ぶ。ナマズ釣り、大きな草魚を釣り上げる。自然の中で思う存分に遊ぶ姿。こういう経験をしないで大人になった私は、羨ましく思った。どの物語も、出会い、発見、喜び、別れがあって少年たちの成長物語になっている。坪田譲治文学賞、椋鳩十児童文学賞をダブル受賞した、デビュー作。2021/02/12