内容説明
死期の迫った女の最期を看取る。そう覚悟した伊兵衛は、おさわをそこまで大切に思っていた我が身に驚く。診療所の子供と三人で神田川へ笹流しにいく途中で伊兵衛は、おさわのことで苦しめてきた妻萩乃と鉢合わせてしまう。息子新一郎も定廻りに昇進し、残りわずかの日々を同心伊兵衛は…。
著者等紹介
押川國秋[オシカワクニアキ]
昭和10年宮崎県生まれ。中央大学法学部卒。東映脚本課を経てフリーの脚本家に。『遠山の金さん』『人形佐七捕物帳』『旗本退屈男』など、おなじみの映画・テレビドラマの脚本を手がける。平成11年、『十手人』(講談社文庫)で第10回時代小説大賞を受賞。最後の受賞者となる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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真理そら
15
これがシリーズ最終巻。臨時廻り同心としての腕は冴えているけれど全くヒーロー的ではなく、男として、夫として、人間として生き方に悶々とするどちらかというと情けないタイプなのが面白い。妻・萩乃の言動が良くも悪くも主婦らしく、すこし無神経に見えたりする点もおもしろい。愛人の最期を精魂込めて看取った夫をこの妻は決して許さないだろうなあ…2018/10/30
山内正
3
たなばた 廻り同心日下伊兵衛は余命僅かのおさわは近所の子供とたなばたの笹飾りを拵え近くの川に流すから伊兵衛に付いて来てと言う やがて橋に 他の流した笹飾りも流れていた おさわは何か思いなかなか流さない 暫くして笹を放り投げたー 伊兵衛はその後家にかえり息子の嫁が祝いの膳を運ぶ姿を見ながら ふと隠居しようかと心で呟いた 五十三になった我が身を考えた。2018/06/05