出版社内容情報
江戸に拡がる暖かい煮炊きの煙
人はね、当たり前のことがおもしろくないんだよ。裏返しや逆さまが好きなのさ――
のぶちゃん、何かうまいもん作っておくれよ――。夫との心のすれ違いに悩むのぶをいつも扶(たす)けてくれるのは、喰い道楽で心優しい舅、忠右衛門だった。はかない「淡雪豆腐」、蓋を開けりゃ、埒もないことの方が多い「黄身返し卵」。忠右衛門の「喰い物覚え帖」は、江戸を彩る食べ物と、温かい人の心を映し出す。
「読み進むほどにページを繰るのが早くならずにはいられない小説がある。この小説もそうだった」――塩田丸男(解説より)
宇江佐 真理[ウエザ マリ]
著・文・その他
内容説明
のぶちゃん、何かうまいもん作っておくれよ―。夫との心のすれ違いに悩むのぶをいつも扶けてくれるのは、喰い道楽で心優しい舅、忠右衛門だった。はかない「淡雪豆腐」、蓋を開けりゃ、埒もないことの方が多い「黄身返し卵」。忠右衛門の「喰い物覚え帖」は、江戸を彩る食べ物と、温かい人の心を映し出す。
著者等紹介
宇江佐真理[ウエザマリ]
1949年函館生まれ。函館大谷女子短大卒。1995年、「幻の声」で第75回オール讀物新人賞を受賞。2000年、『深川恋物語』(集英社文庫)で吉川英治文学新人賞受賞。2001年、『余寒の雪』(文春文庫)で中山義秀文学賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ミカママ
192
ああああああ、いいなぁ、宇江佐さん。読み始めは「しめしめ、これはあたしの大好物のお江戸人情モノプラスお江戸のB級グルメも堪能できる作品に違いない」とホクホクだったのですが、蓋を開けてみれば、それに加え、正一郎とのぶの夫婦恋愛物語でもあったのです!なんと贅沢な作品でしょうか。(夫婦というのは)ふたりでいてもひとりよりずっと寂しいこともある…うーむ、深いね!どの編もみんな好き。そして「卵のふわふわ」作ってみたいような気もするけど、想像して楽しむだけにしておこう、と思います。2015/09/20
ナイスネイチャ
187
夫の夫婦と仲良く、夫だけ意地悪でそれに耐える嫁が主人公。子供が産まれない悩みなど料理が一応メインだがほとんど入ってこなかった。夫以外の人の温かさが際立ってほっこりいたしました。2016/06/19
のっち♬
123
隠密廻りの亭主の邪険な言動に耐えかねて家を出たのぶだが、何かと気をつかう食い道楽の義父と態度を改めてゆく亭主に揺れ動く。6つのエピソードに通底するテーマは食を介した人の結びつきであり、『卵のふわふわ』をつくる場面は本書の焦点。この響きと作品のイメージもマッチしている。「おいしい物を召し上がる機会をたくさん持ちなさい」—食卓は人間関係の要所だ。とりわけ義父母の造形が魅力的で、それだけに珍味の効いた最終章は温かくも物寂しい読後感。どんなありきたりで質素な素材からも「ご馳走」を作れる著者による円熟味溢れる一冊。2022/02/04
紫 綺
115
単行本にて読了。江戸時代の夫婦生活の妙を描く秀作。卵のふわふわ、美味しそう♪2015/03/27
ぶち
108
登場人物がいいのです。伝説の同心。湯島学問所の学問吟味をあっさりと合格。でも、剣術はだめ。それでも江戸の外まで下手人を追いかけていって、そのまま行方知れずとなってしまう。そして、葬式が済んだ後にひょっこりと下手人を連れて戻ってきたりする。その同心が主人公ではなくて息子に嫁いできた嫁が主人公。しかもこの嫁、夫に愛想がつきて実家に戻ったりしているのです。もうこれだけで物語の面白味が増すというものです。そんな家族を繋ぎ止めているが食事です。一緒に食べるだけで心が繋がっていく。料理が物語の味わいを高めています。2021/06/16