内容説明
中年ほど心の危機をはらんだ季節はない──。日本文学の名作12編を読み解き、職場での地位、浮気、子どもの教育、老いへの不安に戸惑い、人生の大切な転換点を体験する中年の心の深層をさぐる、心理療法家ならではの「中年論」。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
Vakira
47
人間は生物であるので命がある限り生きたい。そして自分の分身を残し、生きる世界を広げる。自分が存在しなくなることに恐怖があり、生き続けたい。何で生き続けたいか?世界の変化を見届けたいし、子供がいれは成長とその次世代だって見届けたい。未来へ行き、知りたい欲求が人間にはある。人によって好き嫌いの個人差はあるが色んな経験が欲しいのだ。夢を覚えていれば人生は2倍楽しいかもしれない。そこで物語(小説、映画等)の存在意義を知る。疑似体験として深層欲求を満たしてくれるもの。それが小説だ。誰かの小説に乗り込み精神高揚する。2021/10/05
ステビア
18
評論としてはなかなか面白い2025/05/12
じゅん
17
中年終盤の身で読むと、ほぼ共感してしまう12の小説世界の事例。「潜在するX」「ワイルドネス」「固体でありながら流体力学的な性質を備えた砂」「自然現象のように抗し難い力ととらえエロスを擬人化しなかったギリシャ人」「トポス」「夫婦の転生」「道草の意義」色々考えさせられた。『身体の結合が争いをけりをつけてくれるのは中年初期までで』『人は人間と動物の差があまりないことを自覚』『中年の親は、自分の子どもをよき家畜にしようとしていないか反省してみる必要』。お気に入りは『凪の光景』を元にした第8章の「二つの太陽」かな。2021/04/11
大先生
11
日本文学12作品を題材に中年の問題を論じた一冊です。中年になると何かが足りないという不可解な不安に悩まされることも多い。有名作品では、夏目漱石の「門」、「道草」、安部公房の「砂の女」等に登場する中年たちの抱える問題を分析しています。円地文子の「妖」では、中年も後半になってくるとエロスの対象が人でなくなり、夫は骨董、妻は坂をエロスの対象にしていると。ちょっと私には理解できない世界(笑)ネットの心理テストによると私の精神年齢20代なので、まだまだ足を踏み入れるには早かったようです(笑)2026/05/06
Inzaghico (Etsuko Oshita)
11
養老の巻末エッセイが的を射ていて、ふむふむと思いながら読んだ。京都は「おとな」を輩出(正しい意味で)するが、関東からは「おとな」はなかなか出ない。「その本質が重層的であるような文化というもの、それが関東にはいささか欠けているのである。関東人はいくら金を持とうが、基本的に貧乏人の性癖を残しており、どことなく乱暴で直線的である」と書き、続けて「関東の小説家というなら、私の頭にたちまち浮かぶのは、三島由紀夫、石原慎太郎、深沢七郎などであり、どう考えたって、これはどこか文化的ではない」とあって、思わず吹き出した。2020/10/10




