内容説明
ウナギが海で産卵することは判っているが、天然の卵を見た者は世界で誰もいない。大海原のどこにニホンウナギの産卵場があるのか?東京大学海洋研究所調査船・白鳳丸が世紀の発見を求め出航した。探査に同行した推理作家・阿井渉介が海洋学の謎に挑む、汗と涙と笑いの冒険ドキュメント。
目次
いかにのたくりゆきしか
航海は後悔にあらずや
我らが不満の海に
憂いつつ陸に上れば
あひみての後のこころに
てふてふが太平洋を渡っていた
君知るや南十字星の夜
田園の憂鬱と喜び
地球の上に夏が来た
届いておくれ星砂に
生々流転 島々転々
見よ南海の空明けて
著者等紹介
阿井渉介[アイショウスケ]
1941年北京生まれ。早稲田大学文学部卒業。シナリオライターとして「特捜最前線」など約500本のシナリオを手掛ける。1980年小説現代新人賞を受賞、以後小説に専念。1988年の『北列車連殺行』を皮切りに、奇想天外な“列車”シリーズを発表、ミステリー界の注目を浴びる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Ken05
5
始めこそウケを狙った文章が鼻につきもしたが、いやいやなんのこれは良書だ。購入当初勝手に思っていたような、おちゃらけた似而非探検紀行でもない。なんと、これは齢60を越えた男の“ビルドゥングスロマン”でもあったのだ。探求者のすることは面白いし、それに感銘を受け、感化される著者も好もしい。しかし探求者のなんと失望と挫折の多いことか。それでも膨大な知識と経験と政治力、そして想像力とで仮説を立て、なお船を出す。きっと筆者も共に多くの悔しさを味わったからこそ夢中になっていったのだろうな。2009/08/11
siopop
2
読んでいて、おぉこの人の文章の書き方 好き! って思える人に時々出会えるのですけど。この文章を書いた作者さんも僕にとってはそんな貴重な人でした。 航海記ってのもポイントが高いです、子供の頃に「どくとるマンボウ航海記」を読んで以来航海記って大好きなんです。 うなぎって謎の多い生物なんですねー、次回蒲焼を食べる時は、何故回遊するのかとか、何故同じ場所で産卵?とかの謎に思いを馳せつつ感謝して食したいと思います・・・2014/08/21
AR読書記録
2
最初,ちょっと文章のノリについていけないと思った.この人の住んでる世界,生き方も自分からはちょっと遠いと思った.でも,読んでいくうちにこの人の身体にぐいぐい引き寄せられていくように思った.実際に自分にはこういう生き方はできないけど(と決めつけるのもなんだけど),この本を読んでいるひととき,わたしもこの人の生き方を体験できているという感じ.ありがたい経験です.また,うなぎ対象ではなくても,私もこういう,何かの探求に心の底から向かっていく感覚,知っていたはず.思い出したい.何かを見つけたいと思った.2010/12/13
うたまる
1
「先生、科学は芸術と同じです。闇への情熱です。五十年百年はおろか、千年後に役に立たなくても、科学はなされるべきなんです」……未発見の日本ウナギの産卵場探しに同行した推理小説家によるドキュメンタリー。最初こそ西村淳『南極料理人』と同じオヤジの悪ノリ文体に感じたが、いやいやどうやら照れ隠しのようで、時に「斟酌を求めてはならない」と自らを叱咤したり案外ストイック。その原動力は昆虫学者の夢の挫折にあるようで、若き海洋生物学者たちにも憧れをもって接している。他、ウナギ薀蓄や50年越しの成功など、読み処が多く面白い。2015/03/18
yamakujira
1
ニホンウナギの産卵場所を探索する調査船に同乗した推理作家が、世紀の発見までをレポートする。軽妙な文章なのにユーモアの味付けが好みじゃないなぁ。でも、内容はとってもおもしろい。ウナギの産卵地の発見が本書のクライマックスなのはもちろんだけれど、寄港地でのフィールドワークも楽しそう。著者は素人なのに、単なる取材じゃなくて、メンバーとして受け入れられていくのが羨ましい。塚本教授と青山船頭の著作も読んでみたいな。著者の本業の推理小説もね。 (★★★☆☆)2015/01/19