出版社内容情報
桐野 夏生[キリノ ナツオ]
著・文・その他
福田 和也[フクダ カズヤ]
解説
内容説明
「朴美愛」偽造パスポートを手に入れたミロは海峡を越え韓国に渡る。偽ブランド品を手がける現地の男と即座に愛人契約を結ぶが、彼は自分の身代わりとなって撃たれ下半身の自由を失ってしまう。深い愛情で結びついた二人は復讐を決意した。覚醒剤、レイプ、殺人。善悪を超えて世界を圧倒する壮絶な魂の遍歴。
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乱読太郎の積んでる本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
383
上巻はあれでもまだ抑制されていたのだ。下巻に入って、ますます疾走のスピードが増す。ミロって、こんなだっただろうかというのが、これまでシリーズを読んできた読者たちの概ね正直な感想だろう。ここではもうクライムノヴェルに突入しているのだから。今度こそは殺人さえも辞さないし、そこに躊躇いさえ見られない。ドラッグもヤクザも、もう何でもありの弾けようだ。最終章で、そこまで来ながら徐に会わないで立ち去るのは、寂しさと強い意志との混交する、さらに新しいミロの姿の造形である。さて、ミロはこの後どうするのだろうか。続編あり?2018/08/11
おしゃべりメガネ
127
上巻読了から約2ヶ月半間が空いてしまい、勢いを少し失いつつもなんとか読了しました。う〜ん、完全に「ミロ」は別な'生き物'になってしまった感がありますね。『顔に〜』のごくフツーにいそうな地味ななんちゃって探偵が悪戦苦闘する姿がリアリティーがあって、楽しかったのになんだか出てくる人物皆が'アウトレイジ'並の悪人ばかりに思えてしんどかったです。それでも先が気になり、読者をひきつけて離さないのはさすが桐野先生の見事な手腕なんでしょうね。今シリーズを機に他の桐野さん作品も手にとってチャレンジしていきたいと思います。2019/03/04
ehirano1
112
「果てしなき渇き(深町秋生)」の藤島を思い出さずにはいられません。愛が狂気にハイジャックされているのか、愛が有する狂気というモノが顕在化しているか、推測は尽きません。いずれにせよ、「ローズガーデン」から著者がミロを壊しにいっているな、と思っていましたが、ミロを壊して新しいミロを誕生させたのには驚きました。「何かを得るには何かを捨てなければならない(開高健)」がまたもや思い出されます。2018/08/05
優希
98
偽造パスポートを手に入れ、韓国に渡ったミロ。恋愛、レイプ、殺人、出産、子育ての道を歩む姿は堕ちていくと同時に新たなる希望へと歩む道でもあったのかもしれません。復讐を決意したはずが、生きることを決意した最後は賛否両論あるところでしょうね。壮絶な魂の遍歴の果てに行き着いた想いにはハードボイルドなミロの姿は見られませんでした。そこが少しモヤっとするところです。2017/12/13
ALATA
89
追う側から追われる側へ、朴美愛と名を変え海峡を渡り、果てしない逃避行に身を落とす。「ミロは男運が悪い女」ほんとにそう思う。相手を思いやること、信じることができない感情は自らを滅ぼすことを知っているのに・・・出来ない、自己崩壊へ進むさまがつらい。ミステリーというよりハードボイルドから苦いピカレスクロマンに変容していることに驚いた★4※解説で読む順番間違えたことに気付く。そして、ミロさんに母性があるとは、二度びっくり!2023/03/07