内容説明
緑豊かな自然の中で、日々山が崩れ、河が荒れる―。祖母・幸田文が著した名作『崩れ』の地を再訪。そこで出会った人々と、寡黙だがかけがえのない「砂防」という営み。「山も川も、人の心も、動かぬものはありません。決別であり、同時にそこからの始まりでもあります」著者の目と心に映る景色を確かな筆致で綴る。
目次
四半世紀の分かれ目 竜ヶ水・桜島
緑の山と砂防さん 六甲・田上山
天涯の幸せ 立山カルデラ
動く土地 小谷村・牛伏川
有珠に呼ばれる 有珠山
心ここにあらざれば 日光・足尾
復興が終わるとき 雲仙普賢岳・長崎市
海へとつづく旅 大谷崩れ・安倍川
あとさきを想う 富士山
時空を超える オーストリア
著者等紹介
青木奈緒[アオキナオ]
1963年4月青木玉の長女として東京小石川に生まれる。曾祖父は幸田露伴、祖母は幸田文。学習院大学文学部ドイツ文学科卒業、同大学院修士課程修了、オーストリア政府奨学金を得てウィーンに留学。その後’89年より通訳、翻訳などの仕事をしながらドイツに滞在。’98年帰国(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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KEI
31
幸田文さんの「崩れ」を良い本だと思った方にお薦めです。孫である著者が祖母の足跡を25年経て辿るエッセイ。見事な描写に圧倒され、GoogleMAPで地形を確かめながら読みました。海底が隆起し、あるいは火山活動により生まれた山は生きている!そこに雨が降り流れが生まれ、人的あるいは地震などの自然活動により崩れが生まれる。文さんは「崩れ」の迫力を描いていた様に思いますが、著者は人の命を守る「砂防」と言う見方から記しています。「地球に重力のある限り崩れない山は無い」。地形の見方が多いに変えられた本でした。2017/08/11
てくてく
6
幸田文が晩年取り組んでいた「崩れ」。その「崩れ」の現場やそこで働く人達を、祖母に代わって探訪した幸田文の孫にあたる著者の随筆。祖母への追慕、「崩れ」から人々の生活を守るために働く人々の姿、そして「崩れ」の現場といったものが比較的若い著者の目を通じて綴られていて、面白かった。何もないことを仕事の目的とする、どちらかというと目立たない仕事の魅力があますところなく描かれていた。2015/10/11