内容説明
弟の月命日に墓参りをした恵は、墓前に皮を剥かれた蜜柑があるのを見た。柑橘類が好きだった弟への妻・美也の思いやりと思っていたが、そうではないと知り、ひそかなわだかまりを感じる。「菊日和」他、必ずしも幸福ではなかった死、誰の胸にもある奥深く秘められた物語を、静かな筆致で描きあげる傑作6編を収録。
著者等紹介
津村節子[ツムラセツコ]
1928年6月福井市生まれ。学習院短期大学国文学科卒業。’65年「玩具」で第53回芥川賞を受賞。’90年「流星雨」により第29回女流文学賞、’98年には「智恵子飛ぶ」で芸術選奨文部大臣賞を受賞。また2003年、第59回恩賜賞・日本芸術院賞を受賞している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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shizuka
57
初・津村さん。今まで読んでなかったのが悔やまれるほど私好み。そこはかとなく吉村さんの空気を感じるのはなぜだろう。夫婦だからなのかな。夫婦だから似ているのか、似ているから夫婦になったのか。「死」にまつわる小説6編。『流星』『火事明り』『青波海』の3つが特にいい。その中でも『火事明り』のクマ子の話。まさかとは思ったけど、そうだよね、そうなるよね。齢7歳の女の子。気が強く自分勝手なのでクラスでは恐れ嫌われている。けれど当人はあまり気にせず毎日学校へやってきていたが。家庭の事情に飲み込まれる悲劇。親は選べない。2016/06/05
ASnowyHeron
25
突然訪れる死、外から見えない家族のうちにあるものにハッとするような作品だと感じた。2016/09/08
mahiro
9
死にまつわる短編六話、死とはその人の生き方が現れる事である。黙々と山村に生きて死んだ人の心に秘めた悲しみ、金はあっても孤独な人に群がる欲に満ちた者達、中でもガキ大将のように元気で強くて生き生きとしていた少女の『火事明かり』は今の問題の児童虐待にも通じて心が痛む。2016/12/09
みなみ
8
Kindle読み放題。アンリミを見ていたら何作もあって、この人はたしか吉村昭の妻だよね?というとっかかりで読み始めた。身近な人の死に遭遇した登場人物たちの物語。インパクトが強かったのは「火事明り」「青海波」だった。まさかの死、だからだろう。逆に、「病人の船」や「紅梅」は最初から病気が提示されているので、死にゆく人を見守る物語である。ふだん短編作品はそれほど読まないが、どの話も短いページ数なのに読後に大きく強い印象を残すので、短編の醍醐味を味わえると思う。 2024/09/10
りりり
6
「死」にまつわる6つの短編集。はっとするように訪れる死やゆっくりと向かう死、忘れかけていた死の存在を再確認させられる。2015/12/05
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