出版社内容情報
暗闇を見つめて半年、魔境はそこにも、ここにも、あなた達の周りにもある!
「私は半ば望んで壊れたのです」。土牢に閉じこめられていた“あの男”は、久遠寺老人を前にしてそう告白した。ちらつくのは幼女・鈴の影。山内の僧はみな口籠もる。しかも多くを語る間もなく“あの男”もまた撲殺された。犯行の目的は那辺(なへん)にあるのか。もはやこの事件は、世俗の常識の及ぶところにあらず!
京極 夏彦[キョウゴク ナツヒコ]
著・文・その他
内容説明
「私は半ば望んで壊れたのです」。土牢に閉じこめられていた“あの男”は、久遠寺老人を前にしてそう告白した。ちらつくのは幼女・鈴の影。山内の僧はみな口篭もる。しかも多くを語る間もなく“あの男”もまた撲殺された。犯行の目的は那辺にあるのか。もはやこの事件は、世俗の常識の及ぶところにあらず。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
セウテス
72
また新しい展開が起こる。明慧寺の地下牢に軟禁される人物、菅野博行の存在が明らかとなる。彼こそは、「姑獲鳥の夏」の事件の発端となった人物であった。当に一作目の完結編とも言える展開となった。更には、謎の少女と明慧寺の土地の所有に連なる人物、松宮仁如の登場。久遠寺老が、博行との会見より見出だした推測を松宮に語る場面の緊張感は、メインイベントの探偵が真相を語る場面の如く、あっという間に時間が過ぎる。しかし、その博行までもが殺害される。犯人の目的は何処に在るのか、更に殺人は起きるのか、全く予想がつかないままです。2015/12/20
えみ
53
これは鉄鼠も大量発生したくなるはずだわ。ここは異界。怨念渦巻く異界の寺。悟りを開くため禅寺で修行する何より品行方正であるはず、あらねばならぬはずの僧侶が…あっちを向いてもこっちを向いても破戒僧だらけ。おまけにまたまた遺体が湧いて出る。どうなっている、僧侶達よ!と思っているのであろう疲弊した面々の心が読めるような分冊版第三巻。いよいよ事件も大詰め。京極堂さえ関わりたくないと匙を投げる入り組んだ過去から現在へ蓄積され続けた残留思念。驚くのはシリーズ第一弾『姑獲鳥の夏』の伏線回収がここでなされていること!凄い。2021/01/21
ソラ
41
僧侶と言えども人は人。いろいろと濃厚な人間関係に小児性愛や同性愛なども絡んでくる。しかしここに至っても何故この人たちを殺すのかという一貫性が見出せなくて誰が何のためにしているのかがわからない。わからないまま最終巻へ…2016/02/08
みや
39
まさかこのように姑獲鳥が絡んでくるとは、再読なのに忘れていたので驚いた。このシリーズは順番通りに、分量的に厳しいが一気に読んだ方が良いかもしれない。登場人物の区別が付かずに苦戦していたが、三巻にしてやっと二転三転を繰り返してきた坊主たちの人物像が形になってきた。坊主頭に袈裟、規律通りに動く僧侶たちの個性が肉付けされていくと同時に、真相へと至る道を覆う靄が、確実に晴れてきていることを感じる。山下警部補の変化も見逃せない。己が信じる社会正義をもう一度信じられるようになった彼は、文句なしにかっこいい。2017/01/03
つたもみじ
30
再読。「僕だ!」仙石楼に引き揚げた今川等と入れ替わるように榎木津と久遠寺が明慧寺へと。混乱を運んできた探偵によって、物語は一気に展開する。菅野と久遠寺との邂逅。鈴。榎木津の目には何が見えたのだろう。私には慈行は空っぽに見える。京極堂が調べていた蔵の事も少しずつ分かり始め、仁如は鈴の存在に動揺する。坊主と衆道ってのは形式美(戦国時代には流行ったようだし)ですよね。初っ端から美僧が出てきた時点で。山下警部補の心が折れてから、それでもしぶとく這い上がっていく様。ある意味で悟りよな。ただの無能でなくて良かったよ。2017/09/16




