出版社内容情報
もう解りました。あなたの腹に巣喰っている大きな鼠の正体が
「もしやあの男――本気だったか」。不可解な呟きを残し、今度は老師の大西泰全が惨殺された。天下の険の懐深く入り込んだ捜査陣はなす術もない。空しく仙石楼に引き揚げた骨董屋の今川、カメラマンの鳥口、そして文士の関口。そこに待っていたのは京極堂による、典座(てんぞ)・桑田常信(くわたじょうしん)の「憑物」落としだった。
京極 夏彦[キョウゴク ナツヒコ]
著・文・その他
内容説明
「もしやあの男―本気だったか」。不可解な呟きを残し、今度は老師の大西泰全が惨殺された。天下の険の懐深く入り込んだ捜査陣はなす術もない。空しく仙石楼に引き揚げた骨董屋の今川、カメラマンの鳥口、そして文士の関口。そこに待っていたのは京極堂による、典座・桑田常信の「憑物」落としだった。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
セウテス
71
明慧寺に乗り込んだ一行だったが、敦子たち修行の取材は行えたものの、刑事たちの捜査は一向に進まない。そして第2の殺人が、起こってしまう。次に殺されるのは私だと怯える常信僧侶に伴って、仙石楼に戻ってきた関口たちの前に京極堂が待っていた。京極堂と常信の禅宗問答や歴史的知識は、難しいなりに興味深い。京極堂が常信の憑き物落としを行うのだが、本作は事件解決に結び着かない、珍しく面白い展開だと思う。では、どの様な京極世界を見せてくれるのか。未だ大したミステリーをしていないと思うのだが、何故か先が気になって仕方がない。2015/12/19
がたやぴん
65
なにかが変だ。大鼠はどうなった。女の子は何者なのか。この二つにあまり触れないまま第2の殺人が起こる。寺の中には複数の御坊さんがいるため容疑者は多数。その割にミステリとしての伏線を積み上げているような記載がない。見落としているのかな。京極堂の蘊蓄を咀嚼するだけだ。自分の中では、仏教の中で異彩を放つのが山伏と禅宗。山伏は神仏習合と山岳信仰が産んだ日本独特の存在だが、禅は大陸産まれの日本育ちで捉えどころがない。イメージ的にはストイックに修行を通じ悟るもの。関口が言った「〜幻覚〜受け流すから修行」がわかりやすい。2015/12/30
えみ
52
不思議だ。京極堂が語りだせば妖疑う魔訶不思議な出来事も怪しげな僧侶達もあっと言う間に俗物のただのこの世のモノ、現実のものとなる。お見事な「憑物」落とし。まるで魔術師の種明かしを見ているように鍍金がはがされていくかの如き鮮やかなお手並み。彼の蘊蓄が最早ホンモノの説経以上の説経に聞こえてしまうのはきっと、人知れず存在していた箱根の山奥にある僧侶達の修行寺、明慧寺でまた一つ僧侶の遺体が増えたという奇妙な展開が背景にあるからだろう。何も解決していない、していないのに、京極堂が渦中に踏み込んでくるだけで妙な安心感!2021/01/20
里愛乍
45
ここに来て京極堂の薀蓄ならぬ講義が始まります。 うん、やっぱりこうでないと!(あったらあったで長いなぁと思うのですが)だけど今回のこの〝禅〟についてはかなり面白く思いました。こうしてみると、仏教とは哲学以上に得体の掴めない、いや掴めるものではないものなのか・・・ 「識」や「数字」ははっきりと「識る」ものだから会得すれば「分かりやすい」、「心」は得てして「無」。 本編での事件をしばし忘れかけるほど、入り込んでしまいました。2017/07/28
みや
34
オブジェのように奇妙な姿勢を取らされているが、見立てではない第二の死体。この気味の悪い演出には、相当の不快感を持った。僧侶が語る仏教話や京極堂による禅講義など、二巻では難解な言葉の洪水に振り回される。「被害者という感情は罪悪感を相殺する」の一言は、苦慮する中で鋭く胸に突き刺さった。部下に見放され、所轄に煙たがれ、坊主に攪乱され、おかしな探偵に詰られる山下警部補が、可哀想すぎて応援したくなる。最初はとにかくヒステリックだった彼が、何とか自分を抑えながら必死にコミュニケーションを取ろうとする姿に心を打たれた。2017/01/02
-
- 和書
- 西島千博写真集