出版社内容情報
桐野 夏生[キリノ ナツオ]
著・文・その他
内容説明
深夜の弁当工場で働く主婦たちは、それぞれの胸の内に得体の知れない不安と失望を抱えていた。「こんな暮らしから脱け出したい」そう心中で叫ぶ彼女たちの生活を外へと導いたのは、思いもよらぬ事件だった。なぜ彼女たちは、パート仲間が殺した夫の死体をバラバラにして捨てたのか?犯罪小説の到達点。’98年日本推理作家協会賞受賞。
著者等紹介
桐野夏生[キリノナツオ]
1951年生まれ。’93年、『顔に降りかかる雨』で、第39回江戸川乱歩賞を受賞。’97年発表の『OUT』は「このミステリーがすごい!」の年間アンケートで国内第1位に選ばれ、翌年同作で日本推理作家協会賞を受賞した。’99年『柔らかな頬』(講談社)で、第121回直木賞を受賞
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
608
暗澹たる気持ちになる小説だ。雅子の孤独、ヨシエの孤独。そして、彼らを含めた登場人物たちのやり場がなく自身にもよくわからない怒りとやるせなさ。弁当工場で深夜勤務に従事する4人の女性たちは、4人4様でありながら、彼女たちの家族はまた、それぞれのあり方で崩壊している。彼女たちの生きる意味も希薄だ。ただただ日常が延々と続いていく。そんな日常さえもが崩壊していこうとしているのだが、それは読者である我々にさえ、いっそ一気に消えてしまわないものかと思わせるようなものだ。圧倒的なリアリティに押しひしがれそうになる小説。2017/04/23
ehirano1
333
負のエネルギーとその連鎖の始まり。そしてその負のエネルギはー職場というよりはむしろ家庭に発しているのではないかと思いました。2018/05/12
おしゃべりメガネ
202
本当にまったくもって今さらですが、やっとチャレンジするコトができました。ウワサには聞いてましたが、コレはかなり思ってた以上に'体力勝負'な作品ですね。メンタルとかが下降気味なトキは、ちょっと敬遠せざるをえないかなと。とある弁当工場で働くパートの女性四人がふとしたコトから、バラバラ殺人に加担するはめに。とにかく最初からずっと、なんとも言えない独特な重苦しい重厚な雰囲気は桐野さんならではかなと。それに加えて、どんどんページを捲りたくなるスピード感もたまりません。クールな「雅子」さんにスッゴく惹かれています。2020/03/18
tatsuya
183
夜勤の工場で働いてるパートさんが急に恐ろしく感じられるほどリアリティがあった。バラバラ殺人事件という現実から乖離した出来事なのに、ごく身近の出来事に感じた。芸人の三浦さんが桐野さんの文章は「ブスでいきがってる女性を首根っこ捕まえてガツンと皮肉るのが上手」と言っていたがその通りだと思った。2015/12/08
優希
145
面白かったです。色々な問題を含んだ犯罪小説という世界に引き込まれました。パートで働く主婦たちの言いようのない不安と失望が、仲間の1人の夫殺害という思いもよらぬ事件から外へと発散されていくのが恐ろしいところです。共犯関係になった4人の行動に目が離せず、その危うさに引き込まれていきました。彼女たちは一体どこまで堕ちていくのでしょう。下巻へいきます。2017/03/22