出版社内容情報
森 博嗣[モリ ヒロシ]
著・文・その他
内容説明
「黒窓の会」。西之園萌絵を囲んで開かれるその秘密の勉強会にゲストとして招かれた犀川創平は、古い写真にまつわるミステリィを披露した。屋根飾りと本体が別々になった奇妙な石塔は、何のために作られたのだろうか。S&Mシリーズ二編を含む、趣向を凝らした十作を収録。『まどろみ消去』に続く第二短篇集。
著者等紹介
森博嗣[モリヒロシ]
1957年愛知県生まれ。現在、某国立大学の工学部助教授。1966年、『すべてがFになる』で第1回メフィスト賞を受賞し、衝撃デビュー
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感想・レビュー
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Tetchy
212
森氏は短編になると情緒が際立つ文系色が出てくると自身でも述べているようで、『まどろみ消去』でもその特徴は顕著に表れていたが、第2集の本書ではそれがさらに洗練さを増している。とにかく冒頭の3編が素晴らしく、ベストかと思っていたが、最後の「僕は秋子に借りがある」にやられてしまった。物語が閉じると同時に木元が感じた思いとはつまり題名そのものなのだと思わされる。この物語は作者の想い出に似た宝石のようなものがこぼれ落ちて生まれたようなものなのだろう。これが個人的ベストだ。短編集の方が好きだなぁ。森作品は。2016/06/23
KAZOO
165
短編集の2作目です。10の短編が収められていて、長編の主人公(犀川、西之園)が出てくるものが2作あります。長編とは異なったおもむきの話が結構あって様々なタイプのものが楽しめます。前作にもあったような散文詩の感じの作品もあります。個人的には「マン島の蒸気鉄道」が面白かったです。2016/03/09
勇波
138
S&Mシリーズを読み終わり、小休止的に本作読了です。オシャレ短編集第2弾って感じです。これからVシリーズに入っていく自分としては小鳥遊くんや紫子さんを垣間見れたことで期待が高まります。。本作の中では『僕に似た人』がお気に入り。なるほど、21階の人達ね…って感じ。最後の「秋子」さんは伊坂幸太郎さんが描くキャラっぽかった。では満を持してVシリーズへ★2016/05/22
セウテス
92
短編集第2弾。犀川と萌絵のシリーズ物2作品を含む、10作の短編集。「気さくなお人形、19歳」は、後のVシリーズからのスピンオフ作品らしい。作者森氏は、理系ミステリの代表格となっているが、本作は見事に文芸作品を感じさせる。作品毎の色合いも様々で、「小鳥の恩返し」の伏線や謎解きの面白さに加え、ブラックな下敷きが見えてくる。「石塔の屋根飾り」は、納得の推理と笑いのオチにも驚いた。本当に幅の広い、理系のイメージを考え直す作品ばかり。きっと読者の好みの作品も、各々に分かれるだろう。「僕は秋子に~」は、私のお薦めだ。2019/03/14
KAKAPO
80
1冊目の短編集『まどろみ消去』とは、また違ったテイスト…ストーリーは記憶に残りにくいが、加速度の緩慢な衝撃が潜在意識の奥に刻まれるような作品が多いと思った。特に巻末の「僕は秋子に借りがある」は、最後に読んだせいもあるかもしれないが、僕の心に鈍い傷を残した。若い男達は一般的に、自分勝手で欲望の対象にならない女性の気持ちを斟酌する能力に欠けている。そして、そのような女性は奥ゆかしく文学的で、要望をストレートに言葉にしない。その魅力が彼の中で開花するのは、彼の知恵と心が成長し彼女と再会する道が断たれた頃なのだ。2016/04/10