内容説明
銀行系リース会社に勤める中年管理職の甲斐は、左遷の身だったが、八年ぶりに審査部長として呼び戻される。さっそく審査に乗りだすと、目にあまる不良債権、おかしな伝票、迂回取引の実態が浮かびあがる。会社を覆うどす黒い影の正体とは?一度は敗れた男が再生を賭け、企業悪と対決する経済サスペンス。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まつうら
40
架空取引を仕組まれて左遷された主人公が、復帰して事件の謎を暴きつつ奮闘する経済サスペンス。脇役の老弁護士、財津がすごくかっこいい。法廷での公判シーンで、相手側の論証を粉砕する反対尋問に思わず拍手してしまった。こんな強力な援護を得て、主人公の甲斐は復讐を果たすが、仇役の猿渡が見せるの独白もまた興味深い。「世間は背任やら横領やらと言うが、それは法律が古いだけだ。実力と機会を得た者が稼いで何が悪いのか?」 ひょっとして、しばしば世間を騒がせる横領犯罪を代弁しているのではないだろうか? 背筋がゾッとしてしまう。2022/10/23
Walhalla
10
高任和夫さんの作品は、タイトルを見ただけで、つい手に取ってしまいます。 リース会社の審査部長に着任した主人公を待ち受けていたのは、巨額の不良債権・合併話、そして架空取引をめぐる民事訴訟、etc。 作者は以前、大手商社の審査部を長くご経験されておられるようですね。すごくリアリティがあって、面白かったです。取引の内容も、法廷での弁論も、非常に分かりやすく描かれていました。納得の一冊でした。2015/12/08
まろんぬ
5
法廷劇がメインで、倍返しだ!とは行かなかったが、夢破れた主人公が少しづつ会社の取引に迫っていくところはじわじわと面白かった。すべてを明らかにしたあとでどことなく寂しさの残るラストもまたよかった。2018/10/01
Yuji
4
リース会社と、その親会社である銀行を舞台にして、欲望と権力を描いた硬派な小説。 ひと昔前はこのような錬金術があったのだろうなぁと思わせる内容で、そのカラクリが見え隠れする度にどんどん引き込まれます。2016/04/07
やきいも
3
今回の詐欺事件の黒幕が過去に嵌められた詐欺事件の首謀者だったことが判明したシーンはこの物語の大きな山場だったと思います。リースはとかく不正取引に巻き込まれやすい業界であり、この物語はそのよくある不正事件を上手く描写してます。