内容説明
アメリカ教・キリスト教とイスラム教、終わりなき戦い!!宗教・民族・領土・政治・経済の原理が世界を複雑にし、国家間や民族間対立の溝を深くする。歴史をひもとき、正義の仮面の下で宗教を歪める人間のエゴを衝く。
目次
第1章 二つの“影”の戦い(われわれに与えられた一つの啓示;“対象化”という逃避行 ほか)
第2章 エルサレムという人類の十字架(イスラム世界への無知と無関心;ユダヤ人の歴史的記憶 ほか)
第3章 衝突する「正義」の歴史(北アイルランドとルターの呪い;アメリカ南部の教会焼き討ち事件 ほか)
第4章 なぜ信仰ある者が人を殺めるのか(宗教に不可避な盲目性;“狂い”と「悪性のナルシズム」 ほか)
第5章 いかに平和を構築するのか(紛争という家族の不幸;自分の中のテロリスト ほか)
著者等紹介
町田宗鳳[マチダソウホウ]
1950年、京都府に生まれる。14歳で出家し、臨済宗大徳寺で修行を積む。1984年、寺を離れ、渡米。ハーバード大学神学部で神学修士号、ペンシルベニア大学東洋学部で博士号(「法然」研究)を取得。プリンストン大学助教授、国立シンガポール大学准教授を経て、東京外国語大学教授(専攻は比較宗教学、比較文明学、生命倫理学)
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感想・レビュー
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ハイランド
58
紛争の大部分が宗教に起因する。だからといって宗教が人を不幸にするものではなく、心の平安、死者への畏敬が本質であるはずだが、教団内の権力闘争、信者を利用し死地へ追い立てる権力者、権力と結託し人々を支配する宗教、異教徒を悪魔扱いする宗教。果たして宗教は人々を幸せにしているのか、不幸にしているのか。気になるキーワード「敵は最初は悪魔化されるが、その後それは害虫とされ完全に非人間化される」「信仰はまず理知を超えていなくてはならない」「紛争は神が人間に与えた十字架」でも最後がアニミズム?自分の中でまだ結論はでない。2016/10/09
姉勤
29
最後は日本人が世界市民的な範を示し、具体的には極東アジアの3国と限りない譲歩を以って和解しろという、りべらるな結論に辿り着き。御坊という宗教家としての見識の見えなさに多少のがっかりしている。ユダヤ教派生の3つの宗教の教義からのいがみ合い、我欲の拡大や、ルサンチマンに起因するもの、イデオロギー、歴史的復讐の喚起など、具体例を挙げて世界の紛争の因果を考察しているが、一般論の域を出ず。人間が般若心経をそのまま実行できるなら、多分平和になるが、人間の遺伝子がそれを許さない。2015/12/28
くりのすけ
5
宗教的観点から紛争を考えるという発想が面白く、大局的な視点から各地の紛争を見ているので、勉強になる本だった。特に、「アメリカ教」という考えからイスラム原理主義との関係をユング心理学を使って分析している点はなるほどと思わされた。2015/05/07
skunk_c
3
9.11とイラク戦争開戦後の、元禅僧でアメリカで神学を学んだ著者の宗教と紛争についての論考。国際関係の専門家でないと自認する著者は、なるべく自分に引きつけて考えようとするが、いかんせん不十分な情報と知識に基づく部分(誤認もあり)が多く、また、イスラームに関しては十分な理解があるとは思えず、さらにハチントンやヴォルカン等の引用が多用され、中途半端に表面をなぜられたような印象。もっと自己の信仰に依拠して書けなかったのだろうか。2015/02/17
mittsko
3
ひとつの典型的な(!)「現代の宗教紛争」論 1~3章の概観は、残念ながら難あり(誤りも多い) 町田先生の真骨頂は4章だろうが、イスラーム論に再考の余地があるのは明白! 5章結論部は内面主義に収束してしまい、紛争論としては偏りが強すぎる2010/07/01