内容説明
昔、あたしは高い石の塀で囲まれた大きなおうちに、おかあさまとばあやとねえやと四人が暮らしていた。うちにはお客さまのない日の方がめずらしいくらい。お客さまたちのことを、おかあさまの「すうはい者」と呼ぶのだとばあやは教えてくれた。ある春のこと、おかあさまはピストルで殺された。その日のことをあたしはよく夢に見る。「魔女だからね。魔女は昔から火炙りに決まっているからね。」という男の人の声が聞こえる。すると急にあたしは自分の手の中に硬い冷たいピストルの感触を覚えるのだった…。充実の一途を辿る著者がくりひろげる耽美の世界、もつれた謎が鮮やかに解き明かされるエンディングをご堪能ください。
著者等紹介
篠田真由美[シノダマユミ]
東京都生まれ。早稲田大学第二文学部卒。専攻は東洋文化。1991年『琥珀の城の殺人』が第二回鮎川哲也賞の候補作となり92年デビュー。建築や歴史に関する並々ならぬ知識と理解は『幻想建築術』『唯一の神の御名』でも遺憾なく発揮され、その想像力の翼は遙か彼方まで読者を誘う
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
へくとぱすかる
42
自分としてはあまり得意でない作品世界だが、ミステリーランドのシリーズとして読破にチャレンジ。登場人物の名前が、全体の1/4を過ぎないと出てこない! ひたすら夢の中のできごとのような、ぼんやりとした印象のままで事件は発生するが、そのあとの顛末も途切れてしまい、まるで芥川の『藪の中』を思わせる、それぞれ違った証言が続く。結局それは物語の構造上必然とも言えるのだが、結末での謎解きが難しかった。ジュニアに向き作品だが、何度か読み返してみる必要がありそうだ。2014/07/12
たか
39
ミステリランドシリーズは大半読んだが、これは最も子ども受けしない作品ではないか。耽美小説的な雰囲気で、つかみどころがなく、スッキリしない後味。D評価2018/02/11
Penguin
32
物語が、子供の目線・第三者の目線・10年後の3部にわかれており、名前すらわからないまま、おかあさまの死の理由についての真相が、少しずつ明らかになっていく。 いやいや…綺麗に騙された。2012/04/26
藤月はな(灯れ松明の火)
32
もうすぐ、全編加筆修正のノベルス版が出版されるため、再読しました。妖艶でありながらも清純であった女性の謎めいた死を巡る告白の語りに紡がれる悲しくも優しい物語。篠田真由美作品を「幻想建築術」からデビューし、その次にこの本を読んだのであの人物が誰か分からなかった思い出があります。しかし、最近、完結したシリーズを完読した今では「あの人も随分、丸くなったな」となんだか心が温かくなりました。そして波津さんのイラストは何度、観てもため息が零れてしまいます。ノベルスにも是非、載ってほしいと切に願っております。2011/05/30
Norico
28
全く関係ない短編と思ってたら、探偵役ですっかり丸くなった彼がでてました。魔女、洋館、桜と、設定はばっちり好みですが、この前に読んだ本と似てて、後で思い出したとき混ざりそうだな(笑)謎の死をとげた美しい女主人について、当時周りにいた人たちが語っていく中で、なぜ彼女が死んだのかを解いていく桜井さん。つやこさんの作ったお庭の美しさを思いながら、ゆっくり楽しみました。2015/03/01