出版社内容情報
藤原 伊織[フジワラ イオリ]
著・文・その他
内容説明
アル中バーテンダーの島村は、過去を隠し二十年以上もひっそり暮らしてきたが、新宿中央公園の爆弾テロに遭遇してから生活が急転する。ヤクザの浅井、爆発で死んだ昔の恋人の娘・塔子らが次々と店を訪れた。知らぬ間に巻き込まれ犯人を捜すことになった男が見た真実とは…。史上初の第41回江戸川乱歩賞・第114回直木賞受賞作。
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乱読太郎の積んでる本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
645
著者の出世作にして代表作。ミステリーとしては、凝り過ぎているためにリアリティを犠牲にすることに。偶然の要素が多いのも、またやや難点ではあるものの、物語の持つ重層性とプロット展開のスピードは一頭地を抜く。主人公の造型も十分に個性的であり、塔子も魅力的である。もっともヤクザの浅井は幾分無理があるような気がするが。桑野にしてもリアリティよりは、面白さが優先された感が否めない。一方、タイトル、及び作中でのタイトルの扱いも実に上手い。こうして振り返ると巧拙こもごもなのだが、エンターテインメント小説としては第1級。2021/02/26
Tetchy
439
冒頭の導入部。静から動への反転が素晴らしく、一気に読者を物語世界に引きずりこむ。登場人物に共通するのは栄光を掴みかけた喪失感だろうか。挫折し、また這い上がろうと努力を重ね、そして再び何かを掴みかけた瞬間、運命が眼の前でそれを攫っていく。ただ彼らは何かのせいにせず、生き延びる事にだけ執着してあるがままに受け入れる。それらを語る文章になんの衒いも飾りもない。ただ少しばかりの感傷を織り交ぜ、物事が、時間が語られる。その行間にあるのは彼らが辿った人生の重み、深みだ。素晴らしい。時間を忘れる読書を久々に体験した。2018/08/05
サム・ミイラ
374
冒頭から緊張感溢れる展開はまさに手に汗握るという言葉がぴったりな好編。アル中でバーの雇われマスターが主人公というのもハードボイルドで良かったですね。よど号や安田講堂そして浅間山荘事件に代表される安保闘争を背景にした物語は大いにワクワクさせてもらいました。ただ残念だったのは結局のところ世界を巻き込むテロの物語ではなく、狭い範囲の人間関係だったという点。これはこれでありだとは思うのですが…。2014/06/05
遥かなる想い
286
文章に独特のリズムがあり、引き込まれる。ハードボイルドらしい作品。2010/05/27
ehirano1
264
彼らはずっと闘っていたんだなぁ、と。それは自他共に認めようと認めざるとも、それは続いていたんだと。そんな読後の思いに浸りながら、私自身は20年も闘っている何かはあるのだろうか?それとも気付いていないだけなのか?そんな気分になりました。2024/12/30
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