内容説明
失踪したAV女優・一色リナの捜索依頼を私立探偵・村野ミロに持ち込んだのは、フェミニズム系の出版社を経営する渡辺房江。ミロの父善三と親しい多和田弁護士を通じてだった。やがて明らかにされていくリナの暗い過去。都会の闇にうごめく欲望と野望を乾いた感性で描く、女流ハードボイルドの長篇力作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Tetchy
186
本書を一言で表すならばそれは“今を生きようと足掻く女たちの物語”だったことだ。登場人物の1人、レンタルビデオの店主がこんなことを云う。アダルトビデオとは人の不幸を笑う物なんだと。“天使に見捨てられた夜”とは即ち男たちの欲望に蹂躙された女たちの夜だ。西洋では赤ん坊は天使によって連れられるイメージが描かれているが、なるほど望まぬして得た赤ん坊はまさに天使に見捨てられた存在なのかもしれない。男と女がいる限り、この“天使に見捨てられた夜”は必ずある。判っちゃいるけど、止められないのよ。それが男と女なのだから。2020/11/08
おしゃべりメガネ
176
女性ハードボイルド探偵「ミロ」シリーズ第2作目です。1作目から遥かに完成度が高くなり、読んでいてぎくしゃく&バタバタしない抜群の安定感がありました。ある一人のセクシー女優の捜索を依頼された「ミロ」は調査を進めていくうちに事態が思いもよらぬ方向へ展開していきます。前作は「成瀬」というミステリアスな男性が登場し、本作は「矢代」というこれまたキケンな匂いのする男性が登場し、また「ミロ」の隣人で「トモさん」もいい感じに物語を支えてくれます。探偵としても、一人の女性としてもなんだか危なっかしい「ミロ」が魅力的です。2018/12/15
りゅう☆
103
AVでレイプされ失踪したリナを探す依頼を受けたミロ。隣人で同性愛者のトモさんに助けられながら、コツコツと調べて足を運び聞きこむ地道な努力、まさにこの繰り返し。だが一つ一つ新たな手掛かりを掴み、だんだん蒔いた種が芽を出していく過程が読みだしたら止まらない。矢代との駆け引き、父の助け、トモさんへの思い。淡々と、けれども複雑な思いが交差する時に起こった殺人にミロ自身も狙われてるかもしれない恐怖が襲う。リナは生きてるのか。新たな依頼者からの依頼理由に脅威を感じるも、衝撃の関係を明らかにしたミロの執念に称賛。2016/09/23
タックン
75
再読。村野ミロシリーズ第二段。今回はAVでレイプまがいのことされて失踪した少女の捜索をする話。AV業界の裏話のエグさより失踪した少女の暗い過去とその真相を追究する中での都会の闇にうごめく欲望と野望の悲しさはかなさがよく出てるな・・・・若い頃の過ちは後で取り返しのつかないことになる典型のミステリー。男のハードボイルドは男の格好よさを描きたいみたいだけど、女性のミロは女性の弱さをさらけだして体当たりで真相をつかもうとするとこが魅力的だな。もっとミロシリーズ読みたいな。2013/08/17
Tsuyoshi
74
村野ミロシリーズ。失踪したAV女優・一色リナにレイプ被害を訴えさせたいと捜索依頼を受けたミロ。捜索を遂行するなかで次々と起こる関係者の死とリナの関係や新たな依頼者とリナの関係とは?ミロの地道ながらも確実な仕事ぶりで次々と新たになる新事実に引き込まれて一気読みできた。2017/11/20